【クルマ選びの新たな指標?】「ゴルディロックスの原理」を知っているか ホット過ぎずクール過ぎず 後編

公開 : 2020.05.24 18:50

あまりにも明白 コンチネンタルGT

また、ある時にはその違いがあまりにも明白なモデルというものもあり、その代表格がベントレー・コンチネンタルGTだろう。

12気筒以下などエンジンではないと考えるひとびとが選ぶ6.0Lモデルは、まさに巨艦とも言える存在だが、個人的にはあらゆる面で4.0L V8モデルのほうが素晴らしいと思っている。

エンジンのシリンダー数で言えば、ベントレー・コンチネンタルGTの場合は少ないほうが良い。
エンジンのシリンダー数で言えば、ベントレー・コンチネンタルGTの場合は少ないほうが良い。

どちらのモデルであっても4秒以下でゼロ発進から100km/hに到達するというのに、わずかコンマ数秒の違いなど誰が気にするだろう?

さらに、サウンドにおいてもV8のほうが素晴らしく、見事なハンドリングとより長い航続可能距離まで備えている。

こうした点はコンチネンタルGTのようなグランドツアラーにとって無視することは出来ないはずだ。

そして、もしまだ現役であれば、同じことがメルセデスAMGのV8とV12モデルにも言えるだろう。

さらに他にもご紹介すべき例は存在する。

EVでも原理は健在 秘密はバランス

F8トリブートのステアリングを握ったことはないが、つねにピスタよりもフェラーリ488 GTBを高く評価してきたのであり、アウディTT RSよりもTTSを、さらにはマクラーレン・セナよりも720Sの方が素晴らしいと思っている。

EVの世界でさえ、ゴルディロックスの原理は健在であり、それはポルシェタイカン4Sとタイカン・ターボSの双方を運転したことがあれば理解出来るはずだ。

ロードテスターはよりハードコアなピスタよりも488 GTBを好む。
ロードテスターはよりハードコアなピスタよりも488 GTBを好む。

もうすでにゴルディロックスの原理の正しさをご理解頂けたに違いないのだから、すべての例を挙げる必要などないだろう。

多くの場合、トップモデルはラインアップの頂点に君臨しているという理由だけで選ばれてきたのであり、そうすればわざわざ安価なモデルを選択した理由を説明する必要などなかった。

だが、もはやより速いほうがより楽しいわけではなく、大きいことが必ずしも良いことではないのだ。

ゴルディロックスの原理の秘密は、ホット過ぎずクール過ぎず、まさにちょうど良いバランスを見つけ出すことにある。

番外編2:ゴルディロックスの原理 温故知新

ゴルディロックスの原理は新車にしか当てはまらないというわけではない。

6気筒エンジンを積んだベントレー・スピードシックが、何故か4気筒 4 1/2Lモデルと比較された当時、「あの強烈なパンチが懐かしい」と言われていたのだから、少なくとも1920年代にはゴルディロックスの原理に該当するモデルが存在していたはずだ。

アストン マーティンDB4はDB5を上回る甘美な走りを見せる。
アストン マーティンDB4はDB5を上回る甘美な走りを見せる。

より新しいところでは、3.8L 6気筒エンジンを積んだジャガーEタイプは、その後5.3L V12を積んで目立つことなく登場したモデルよりも、はるかに優れたドライバーズカーだと評価されていた。

同じくアストン マーティンDB4はDB5よりも見事なドライバーズカーであり、2代目フォルクスワーゲン・ゴルフGTIは16Vエンジンモデルよりも優れたクルマだった。

さらに、オリジナルのS3ロータス・エスプリはエスプリ・ターボよりも素晴らしい。

もちろん、異論もあるだろう。

だが、さらに新しくより明らかなケースが、驚くほど甘美なV8を積んだ初代アウディR8だ。

後から加わったV10モデルも魅力的に思えたが、このクルマからはニュートラルなハンドリングやフィール、そしてエンジンとシャシーの見事なバランスが失われていた。

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