「最初」の受賞車:ローバー2000 革新的リアハッチ:ルノー16 先進のロータリー:NSU Ro80 欧州COTYの1番を選ぶ(2)

公開 : 2024.02.11 17:46

市場を牽引できなかったNSU Ro80

好対照に、1968年の欧州COTY、NSU Ro80は先進的。歴代の受賞車で、数少ない未来的なモデルだとレイは認める。後に信頼性と燃費の悪さが露呈し、市場を牽引することができなかったとしても。

とはいえ、フィアット125やシムカ1100を超えるポイントを集めたことは事実。ツインローターのロータリーエンジンに、3速セミ・オートマティック、前輪駆動というパッケージングは、審査員を感心させるのに充分だった。

NSU Ro80(1967〜1977年/英国仕様)
NSU Ro80(1967〜1977年/英国仕様)

ロータリーエンジンの能力は、確かに高かった。1.0Lの排気量から、自然吸気でも115psの最高出力を発揮。可動部品は少なく、軽量に仕上がっていた。これに、シフトレバー上部のスイッチでクラッチを操作する、セミATが組み合わされた。

シャシーも新しかった。サスペンションは前後とも独立懸架式。バネ下重量を削るため、フロントのディスクブレーキは、ドライブシャフト内側に備わるインボード構造。アシスト付きの、ラック&ピニオン・ステアリングラックも採用されていた。

今回のRo80は、フィル・ブレイク氏がオーナーの後期型。1975年式で、発進直後から印象が良い。「知的なクラッチは、見事に機能します。スタイリングも、空気抵抗を意識したことが明らかです」。とレイが強みを話す。

「さほど古く感じません。見た目には、現代のデザイナーも惹かれる特徴があるように思います」。とスティーブも笑顔を見せる。一方で、常に高い回転数を保つ必要がある、エンジンのパワー感を指摘する。

それでも、マットの意見に否定する声は挙がらなかった。「乗り心地は上質です。沢山の魅力を備えた、本当に洗練されたモデルだと思いますよ」。かくして1960年代の代表には、Ro80が選ばれた。

1960年代の欧州COTY代表 3台のスペック

NSU Ro80(1967〜1977年/英国仕様)

英国価格:2444ポンド(新車時)/2万1000ポンド(約390万円/現在)以下
生産数:3万7402台
最高速度:181km/h
0-97km/h加速:12.6秒
燃費:5.3-8.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1196kg
パワートレイン:ツインローター995cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:115ps/5500rpm
最大トルク:16.1kg-m/4500rpm
トランスミッション:3速セミ・オートマティック(前輪駆動)

ルノー16(1965〜1980年/英国仕様)

英国価格:919ポンド(新車時)/9000ポンド(約167万円/現在)以下
生産数:185万1502台(合計)
最高速度:141km/h
0-97km/h加速:16.9秒
燃費:11.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:980kg
パワートレイン:直列4気筒1470cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:59ps/5000rpm
最大トルク:10.7kg-m/2800rpm
トランスミッション:4速マニュアル(前輪駆動)

ローバー2000(1963〜1973年/英国仕様)

NSU Ro80(1967〜1977年/英国仕様)
NSU Ro80(1967〜1977年/英国仕様)

英国価格:1264ポンド(新車時)/1万ポンド(約186万円/現在)以下
生産数:20万8875台
最高速度:167km/h
0-97km/h加速:14.6秒
燃費:7.8-10.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1252kg
パワートレイン:直列4気筒1978cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:90ps/5000rpm
最大トルク:14.9kg-m/2500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

この続きは、欧州COTYの1番を選ぶ(3)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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