ロールス・ロイス・スペクター 詳細データテスト 品格ある走り 新時代ロールス 革新的EVではない

公開 : 2024.03.02 20:25  更新 : 2024.03.08 18:29

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

ロールス・ロイスのEV転換への流れは、2011年のジュネーブショーで公開された102EXに遡る。7代目ファントムに動力用バッテリーを積み、ゼロエミッションモデルへの顧客の反応を図ったコンセプトカーだ。

スペクターの土台となるのは、ロールスの現行モデルと共通するアーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー。2014年に登場した革新的なアルミスペースフレームで、内燃エンジンとEVのいずれにも対応できるよう想定されている。

22インチホイールが標準だが、テスト車はポリッシュとブラックの2トーンで仕上げられたウイングスポークこと23インチを装備。見栄えは最高だが。8730ポンド(約165万円)となかなかのお値段だ。
22インチホイールが標準だが、テスト車はポリッシュとブラックの2トーンで仕上げられたウイングスポークこと23インチを装備。見栄えは最高だが。8730ポンド(約165万円)となかなかのお値段だ。    MAX EDLESTON

とはいえ、スペクターのシャシーは、ゴーストやファントム、カリナンのそれとはだいぶ違う。2重バルクヘッドに加え、2層構造のフロアを採用することで、洗練性向上と、静的剛性30%アップを果たした。そのフロアには、120kWhの駆動用バッテリーを搭載する。

ただし、バッテリーの実用容量は102kWhに留めた。一般的なグロス/ネット比だが、これは並外れて長いことが多いロールスのライフスパンに見合った耐久性を持たせるためだ。第5世代のプリズマティックバッテリーを使用するが、これはすでにBMWの電動モデルで広く使用され、品質と耐久性に定評があるからだ。

電気系は400Vで、ポルシェアウディヒョンデキアが採用する800Vに対し、直流急速充電のスピードは落ちる。だが、高圧回路を組み込めば、構造はより複雑になり、重量も増してしまうというデメリットを顧客に正当化できない、との判断だ。

フロントに259ps、リアに490psの駆動用ハイブリッド同期モーターはを積む。この組み合わせは、BMW i7 M70と同じだ。585ps/91.3kg-mという総合スペックは控えめに思えるが、バッテリーの耐久性やクルマの性格に合わせた設定だと言える。

ロールスの顧客は、買えるうちで最もパワフルなクルマを求めているわけではない。それに、ブラックバッジモデルを除けば、このスペクターがロールス最強ラインナップだ。

ゴーストのプラナーサスペンションのアダプティブ仕様がベースとなる足まわり。ダンパーとエアスプリングはアダプティブ制御、スタビライザーはアクティブ制御で、四輪操舵も標準装備される。ホイールは22インチが標準仕様で、オプションでは23インチも設定。タイヤはロールス専用の、ノイズキャンセリング機能付きランフラットだ。

テスト車の実測重量は2935kgで、カタログ値から45kgのプラスだが、装着オプション一覧を見れば納得できる。とはいえ、2018年に計測した8代目ファントムに比べて155kg重いにすぎないのだが。

記事に関わった人々

  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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