ロールス・ロイス・スペクター 詳細データテスト 品格ある走り 新時代ロールス 革新的EVではない

公開 : 2024.03.02 20:25

走り ★★★★★★★★★★

スペクターの動きに、暴力的だと感じさせるものはなにもない。フルパワーにしてもスクウォットは小さくトラクションのロスはなく、またスイッチオンでドッカン91.3kg-mというような力の出し方もしない。ただただどこまでも、静かに落ち着いたままペースを上げて流していける。伝統の12気筒を超えていると感じたが、それでいて整い具合も静けさで劣るということもない。

最新のロールスは速さも兼ね備えるが、0-97km/hはファントムが5秒以上、ゴーストは4.7秒といったところ。そしてスペクターが4.1秒。EVらしく低速から力強く加速し、シフトチェンジがなく、速度が上がるにつれたくましさは薄れはじめる。しかし、BMWグループのハイブリッド同期モーターは、その落ち具合が小さいほうだ。

高出力EVとはいえそこはロールス。発進は行儀よく、スロットルレスポンスは絶妙。ブレーキも、車重を考えれば十分に強力だといえる。
高出力EVとはいえそこはロールス。発進は行儀よく、スロットルレスポンスは絶妙。ブレーキも、車重を考えれば十分に強力だといえる。    MAX EDLESTON

それゆえ、高速道路の流れを制するようなパフォーマンスは健在で、97-161km/hは5秒ジャスト。ゴーストは5.6秒。これら凌ぐのがメルセデスAMGEQS53で、4.8秒だった

ロールスにとって速さよりはるかに大事なのが、スムースなドライバビリティである。スペクターには走行モードや回生ブレーキセッティングの切り替えがない。コラムシフトにはBモードがあって、麗しくクッションの利いたスロットルレスポンスを見せる。それは遅れを感じさせないが、瞬発的でもない、絶妙なところだ。パワーをかけていくと、すばらしくコントロールしやすい。

ブレーキ性能は、ほぼ現行ロールスと同等。ペダルはプログレッシブで、効き具合を調整するのもきわめてイージー。制動テストでは、緊急ブレーキではさすがに重量の影響を感じさせるが、テストの結果は制動能力に不安を感じさせるようなものではなかった。

記事に関わった人々

  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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