メルセデスAMG EQS 詳細データテスト 楽に飛ばせて快適 低速域は洗練性が不足 質感は不満も

公開 : 2022.06.26 18:25

メルセデス初の専用設計EVを、AMGモデルでテスト。EVのSクラスとしては質感も洗練度も不満ありですが、航続距離は長く、高速域では快適。動力性能は文句なく、ハンドリングもまずまず。今後のさらなる改善に期待です。

はじめに

メルセデスほどトラディショナルなメーカーが、新たなカテゴリーの先頭を争うために果敢な征服者のようなモデルを投入するとは、考え難いかもしれない。しかし、最近のメルセデスがトラディショナルかどうかは議論の余地がある。また、そういうことが起こるということは、自動車業界の競争がいかに激化しているかを示す物差しにもなる。

クロスオーバー乱立の口火を切った1998年のMクラスを別にしても、メルセデスには奇をてらわず、それでいてまったく斬新なモデルでセグメントのトップを脅かしたことがある。それも、この10年ほどで3度もだ。

テスト車:メルセデスAMG EQS 53 4マティック+ナイトエディション
テスト車:メルセデスAMG EQS 53 4マティック+ナイトエディション    LUC LACEY

まずは、フォルクスワーゲン・ゴルフのシェア奪取を狙った3代目Aクラス。次に、ポルシェ911オーナーを振り向かせようとしたAMG GT。そしてもうひとつが、今回のクルマ、EQSである。

この完全電動サルーンは、シュトゥットガルトのEVラインナップにおけるフラッグシップとなる。目指すはテスラモデルSの撃墜、といったところだろう。

しかしこのEQSには、それ以上に大きな意味がある。欧州市場における、来るべき2030年の完全電動化に向けて、メルセデスを牽引する役割が期待されているのだ。

ソフトウェアのオーバー・ジ・エア(OTA)アップデートをはじめ、自動車業界のトップレベルを誇る空力効率や航続距離、無数のテクノロジーを詰め込んだインフォテインメントと衝突安全機能。そうした数々は、その価格に見合った充実ぶりだ。

プラットフォームは下位セグメントのEQEや、さらに2車種のSUVにも使われる予定で、それゆえに出来のよさが求められる。電動化時代のSクラスというべきこのEQSをテストすることで、ジンデルフィンゲン工場から今後送り出されるモデルの未来も占えるのではないだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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