かつてないほど「4ドアの911」 ポルシェ・パナメーラへ試乗 ステアリングとサスペンションの醸す味わい

公開 : 2024.03.21 19:05

素のパナメーラでも素晴らしく有能

中央には、インフォテインメント用タッチモニター。システムはアップデートされ、使い勝手は悪くない。

実際に押せるハードスイッチも充分残されている。ただし、強めに触れるとパネル全体が歪むことがあり、ソリッド感は乏しいかもしれない。グロスブラックのパネルは、傷が付きやすい様子。試乗車にも少なからず見られた。若干、品質は落ちたといえる。

ポルシェ・パナメーラ(欧州仕様)
ポルシェ・パナメーラ(欧州仕様)

助手席側のダッシュボードにも、ブラックのパネルが埋め込まれる。これが退屈な場合は、追加費用でエンターテイメント・モニターへ交換できる。英国では、1289ポンド(約24万円)のオプションだ。

車内側のドアハンドルは、磨き込まれた金属製。スリムで見た目が良い。

空間の広さに変更はなし。運転姿勢は、背もたれが傾き足を伸ばすスタイル。ポルシェは、パナメーラを4ドアスポーツカーと呼んでいるが、それとリンクする体勢だ。

リアシートの広さは充分。全長が5049mmあるだけあって、前後方向にゆとりがある。シートの座り心地に、まったく不満はない。

さて、一般道を走り出せば、素のパナメーラでも素晴らしく有能なことへ感心する。ドラマチックとはいえないが、0-100km/h加速4.8秒の動力性能を備える。シームレスな変速で、当然のように滑らかに疾走する。

V6ツインターボは心地良いサウンドを奏で、オプションのスポーツエグゾーストのバルブを開けば、ドライな音質が雰囲気を高める。標準のマフラーは、排気ガス規制の影響で薄味だから、追加したいアイテムだ。

パワーデリバリーは線形的。外界との隔離性も非常に高い。

しっかりポルシェらしい雰囲気

アップデート後のパナメーラで再確認したのが、しっかりポルシェらしい雰囲気を感じ取れること。SUVのカイエンでも、911と共通した心象がある。彼らなら、トラックもポルシェっぽく作れるかもしれない。

その特徴を醸し出している要素の1つが、サスペンション。上質な乗り心地を実現しつつ、路面との接続性を体感させるという、秀抜なバランスに仕立てられている。

ポルシェ・パナメーラ(欧州仕様)
ポルシェ・パナメーラ(欧州仕様)

エアサスペンションでも、メルセデス・ベンツの魔法の絨毯的な質感とはまったく違う。それでいて、路面からの入力をしっかりなだめ、ボディの動きは抑制され、見事に角が取れている。

以前から、AUTOCARではパナメーラのエアサスは高く評価してきた。正直なところ、アップデート前後の違いは、直接乗り比べなければわからない。見違えて進化したとはいえないようだが、優秀なことに変わりはない。

ステアリングフィールも、ポルシェらしさを生んでいる要素。特有の重み付けがあり、明瞭な感覚が手のひらへ伝わってくる。今回の試乗はスペインのワインディングだったが、フロントタイヤのグリップ状態を、手に取るように理解できた。

後輪駆動でも、路面が濡れていても、トラクションは揺るぎない。多くのドライバーは四輪駆動を選ぶと思うが、頻繁に雪が降るような地域に住んでいない限り、その必要性は低いように思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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