バッテリーコスト30%削減へ メルセデス・ベンツ、新拠点で2倍近いエネルギー密度目指す

公開 : 2024.07.10 18:25

メルセデス・ベンツが8日、ドイツに新たなEV用バッテリーの研究開発センターを開設した。エネルギー密度を0.9kWh/lまで高めることでコストを最大30%削減する目標だ。

ドイツに新拠点 エネルギー密度向上目指す

ドイツの自動車メーカーであるメルセデス・ベンツは、電気自動車(EV)用バッテリーのエネルギー密度を高めることで、コストを最大30%削減する目標を掲げている。

バッテリーのエネルギー密度を1Lあたり0.9kWhまで高める。現在最も効率的なEVであるEQSセダンに搭載されている120kWhバッテリーのエネルギー密度は、1Lあたり0.55kWhである。

メルセデス・ベンツは0.9kWh/lという高いエネルギー密度を実現し、コスト削減を目指す。
メルセデス・ベンツは0.9kWh/lという高いエネルギー密度を実現し、コスト削減を目指す。

この目標は、メルセデス・ベンツと米国のシラ・ナノテクノロジーズ(Sila Nanotechnologies)社が共同開発した、シリコン複合負極を備えたリチウムイオンバッテリーで謳われている1Lあたり0.8kWhを上回るものである。

メルセデス・ベンツの研究開発責任者であるマルクス・シェーファー氏は、「目標は、メルセデス・ベンツのDNAを受け継いだ最高のセルを開発することと、その産業化のための専門知識を構築することです」と語った。

開発は、7月8日に140億ユーロ(約2兆4450億円)を投じてドイツ・シュトゥットガルトのウンターテュルクハイム工場(既存のエンジン開発事業の中心地)に開設した新しいバッテリー研究開発センター「eCampus」で行われる。

eCampusは、シリコン複合負極を使用したリチウムイオンセル、コバルトフリーの正極材、固体電池など、さまざまな技術を試験・開発するために設立された。これにより、メルセデス・ベンツがこれまでエンジン開発で培ってきたような、社内での開発能力を高める。

また、敷地内にはさまざまな化学組成のバッテリーセルを大規模に製造し、試験することができるインダストリアル・セル・ラボが設けられる。リードタイムを大幅に短縮し、年間数万個のセルを製造できる。

「わたし達は、技術的に主導的な役割を果たそうとしています。eCampusは、わたし達をこの目標に近づけてくれるものです。ここで行われている研究は、今後数年間でバッテリーコストを30%以上削減するのに役立つでしょう」とシェーファー氏は語った。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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