「怪物」の異名を持つ衝撃の姿 アルファ・ロメオRZ(2) エンターテインメント性は歴代1番

公開 : 2024.08.18 17:46

混迷の時期に開発されたアルファ・ロメオSZとRZ 本当に四角いシルエット シャシーやランニングギアは75から流用 歴代1番のエンターテインメント性 希少なスパイダーを英編集部が振り返る

衝撃的で目を逸らせないような存在感

アルファ・ロメオRZでは、上部のスリットが省かれたボンネットが与えられ、サイドシルのデザインを僅かに変更。フロントポイラーの形状も異なり、下辺が持ち上げられている。フロントの低さは、SZの悩みの1つになっていた。

生産数は、当初500台が計画されていたものの、程なく350台へ削減。しかし市場の反応は鈍いままで、1993年までにラインオフしたのは242台だった。1994年に追加で32台が生産されているものの、予定には届いていない。

アルファ・ロメオRZ(1992〜1994年/欧州仕様)
アルファ・ロメオRZ(1992〜1994年/欧州仕様)

英国では、RZの正式販売はなかった。それでも、並行輸入され少なくない数が存在している。今回のイエローの1台も、それだ。

シルエットは、クーペとスパイダーで好みがわかれるだろう。クーペのSZは当初のコンセプトに純粋。RZは、ダブルバブル・ルーフを彷彿とさせるリアデッキなど、ザガートらしいと評価することができる。筆者はどちらも好きだが。

RZを離れた場所から眺めると、2024年でも不足なく衝撃的。イエローという鮮烈なカラーも相まって、他のモデルと見間違えることはない。純粋に美しいとは表現できないかもしれないが、目を逸らせないような存在感がある。

ソフトトップは、リアヒンジのトランクリッド内へ美しく折りたたまれる。テールライトはスモーク処理され、四角いヘッドライトは片側に3灯。フロントガラスはSZより低く、ボンネットの後端はワイパーへ当たる気流を考慮し、跳ね上がっている。

ダイレクトに鑑賞できるブッソ・ユニット

ドアを開きシートへ腰を下ろすと、ベルトラインはドライバーの肩の辺り。車内はSZより豪華に仕立てられている。ホワイトの文字盤にブラックの文字があしらわれたメーターが、グレーのパネルに並ぶ。雰囲気はイタリアンだ。

ダッシュボードやセンターコンソールは、レザー張り。ただし、フィット感はさほど高くない。クーペのSZではシート後方へ荷室が備わるが、RZはバルクヘッドで仕切られている。小さなパネルを開くと、その奥の収納へアクセスできる。

アルファ・ロメオRZ(1992〜1994年/欧州仕様)
アルファ・ロメオRZ(1992〜1994年/欧州仕様)

人間工学的には、不完全といわざるを得ない。平均的な身長のドライバーでも、ロールバーを兼ねたフロントガラス上端のフレームは、視界にかかる。

走り出せば、喜びに満ちている。アルファ・ロメオ75だけでなく、GTV6などとも共有するオールアルミ製のV6自然吸気エンジンは、ジュゼッペ・ブッソ氏による設計。スパイダーでは、芳醇なサウンドをダイレクトに鑑賞できる。

マン島TTレースで走るコースと、ほぼ同じルートを運転する。回転数を高めない限りうるさくないが、間違いなくソウルフル。車重はSZより100kgほど多く、1356kgある。
圧倒されるほどの加速力ではないが、興奮を誘う。

アルファ・ロメオ75譲りのトランスアクスルは、増えた車重を想定しギア比がショートに改められているが、最高出力は210psと驚くほどではない。かつて、0-96km/h加速は7.0秒で、230km/hの最高速度が主張されたが、本当に届くのだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ヘーゼルタイン

    Richard Heseltine

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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