レンジローバー・スポーツ x ポルシェ・カイエン 比較試乗(2) 高級感と多用途性か 技術的な達成度か

公開 : 2024.08.24 09:46

スポーツSUV市場を牽引するレンジローバー・スポーツとポルシェ・カイエン 多様性と高い目標の達成が求められる2台 刺激的なスポーツSUVは? 英国編集部が比較試乗

本性が顕になるスポーツ・モード

ポルシェカイエン・ターボ E-ハイブリッドが積むハイブリッド・パワートレインは、カタログ値の通り、馬力とトルクでランドローバーレンジローバー・スポーツ SV エディションワンより優位。オプションの、GTパッケージが組まれてもいる。

欧州市場ではCO2の排出量を理由に、カイエン・ターボGTという禁断の果実的な仕様が提供されていない。それを補う軽量化パッケージがこれで、ターボGT由来のアイテムがふんだんに追加される。

ブラックのランドローバー・レンジローバー・スポーツ SV エディションワンと、グレーのポルシェ・カイエン E-ハイブリッド・クーペ GTパッケージ
ブラックのランドローバー・レンジローバー・スポーツ SV エディションワンと、グレーのポルシェ・カイエン E-ハイブリッド・クーペ GTパッケージ

カーボンファイバー製ルーフパネルの他、リアディフューザー、チタン製スポーツエグゾースト、ネガティブ・キャンバーを強めるフロントハブ、軽い補機バッテリーなどが組まれ、100kgの重量削減に貢献。車重は、2495kgに抑えられている。

オプションがなければ、レンジローバー・スポーツの方が明らかに軽量なのだが、今回の2台はほぼ同じ。車重は10kg軽いだけに過ぎない。動力性能で優れるカイエン・ターボの方が、舗装路での動的な戦いを有利に進めそうなことは、想像に難くない。

プラグイン・ハイブリッドの中には、乗り手を混乱させるように協調性の低いシステムも存在するが、カイエンのそれは違う。電気だけで静かに発進する一方、ステアリングホイールのセレクターでスポーツ・モードを選ぶと、研ぎ澄まされた本性が顕になる。

専用ボタンで召喚するSVモード

チタン製マフラーから、聴き応えたっぷりな4.0L V8ユニットの排気音が放たれ、トランスミッションはエンジンの回転数と見事にシンクロ。エアスプリングは、ボディをフラットに保つ。

ステアリングホイールは、不要な路面の質感を排除しつつ、指先へポジティブな感触を伝え始める。速く運転すればするほど、深遠な才能が発揮される印象。大きく重いクルマでありながら、走りは極めてダイナミックだ。

ランドローバー・レンジローバー・スポーツ SV エディションワン(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー・スポーツ SV エディションワン(英国仕様)

レンジローバー・スポーツには、感心するほど多様なドライブモードが準備され、基本的にはダッシュボード上のタッチモニターから選べる。ただし、SVモードは特別。ステアリングホイールに与えられた、専用のボタンで召喚できる。

これを押すと、これまで黒子に徹してきたBMW由来の4.4L V8ツインターボエンジンはボリュームアップ。ややデジタル的な人工音ではあるものの、不快さは微塵もない。

洗練性や快適性が重視されつつ、動的な能力の幅は間違いなく広い。目的地までゆったり心地よく移動できるのと同時に、スポーティな操縦性も叶えている。ただし、高次元でのグリップ力や安定性、躍動感で、カイエン・ターボに並ぶとはいえないだろう。

実用性で有利な四角いボディは、カーブが連続するワインディングでは足かせになる。悪路での走破性に必要なサスペンション・ストロークも、アスファルトではボディの落ち着きを保つうえでハンデ。最も低く引き締めても、完全には挽回できない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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