新・日産リーフ:欧州で競合と実力を探る(2) 走る喜びを醸すエルロック 長く広いEV4

公開 : 2025.11.07 18:10

業界を一変させるきっかけを生んだ初代リーフ 路面へ追従し穏やかで快適 走る喜びを醸し出すエルロック 劣らず快適で有能なEV4 同価格帯の2台と、3代目の実力をUK編集部が探る

ライバル以上の走る喜びを醸し出す

フォルクスワーゲン・グループのスコダが2025年に発売したエルロックは、英国で急速に支持を集めつつある。バッテリーEVとしての性能だけでなく、創刊130年のAUTOCARが重視し続けてきた、運転の楽しさもしっかり宿す。

車重は2115kgあり、新しい日産リーフキアEV4より200kg近く重い。それでも、後輪駆動の走りは鋭い。1基の永久磁石同期モーターは286psを発揮し、0-100km/h加速を6.5秒でこなす。

ライト・ブルーの日産リーフと、グレーのキアEV4 GTライン・ハッチバック
ライト・ブルーの日産リーフと、グレーのキアEV4 GTライン・ハッチバック    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

正確で安定感の高いステアリングに、巧妙に姿勢を制御するサスペンションが、リーフやEV4以上の喜びを醸し出す。見た目はSUVでも、今回の3台では運転が1番楽しい。

華やかで開放的なインテリア 後席は狭め

エルロックは小柄なリーフより約140mm長く、実用性も僅かに優れる。荷室容量は470Lもある。リーフには、床下に充電ケーブルをしまえる便利な収納が備わるが、容量は437L。EV4は435Lとやや劣り、2台とも床面が高く荷物を載せにくい。

乗員空間も、エルロックにはゆとりがある。3台では1番長いEV4も、当然だが広々。クーペ風のシルエットを持つリーフの後席は、高身長の大人には少し窮屈だろう。ファミリーカーとして、充分に使える広さではあるとしても。

スコダ・エルロック 85 エディション(欧州仕様)
スコダ・エルロック 85 エディション(欧州仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

そのかわり、リーフの前席側はホワイトの差し色が華やかで開放的。ダッシュボードは特徴的なブルーの合成皮革で覆われ、好ましい個性がある。スコダやキアの、落ち着いたモノトーンを好む人もいるとは思うが。

操作しやすいモニター エアコンの調整も簡単

インフォテインメントは、リーフが僅かにリードする。ダッシュボードがタッチモニターの下で手前に出ており、操作時に手を支えるのに好都合。タッチセンサーのショートカットで、エアコンの温度調整も簡単にできる。

EV4のシステムも悪くない。直感的に扱え、ショートカットの設定も難しくない。エルロックは、タッチモニター下のタッチセンサーが曲者。エアコンの温度を上げたいのに、ラジオのボリュームを変えてしまうこともあるだろう。

ライト・ブルーの日産リーフと、グレーのキアEV4 GTライン・ハッチバック
ライト・ブルーの日産リーフと、グレーのキアEV4 GTライン・ハッチバック    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

もっとも、いずれも慣れれば使いにくいものではない。アップル・カープレイとアンド・ロイドオートに無線で対応し、ナビは充電ステーションの位置も検索できる。

バランスの取れたリーフ 真の万能選手は?

最後に価格。リーフの正式決定はまだだが、英国では約3万9000ポンド(約795万円)になる見込み。グレートブリテン島で生産される唯一の量産EVだから、政府は3750ポンド(約76万円)の補助金対象にすると考えられる。

チェコ生産のエルロックは、補助金を引いた状態で3万7160ポンド(約758万円)。EV4は3万9395ポンド(約804万円)で、補助金の枠は未定。スロバキアで生産されており、1500ポンド(約31万円)が適用される可能性が高い。

左からグレーのキアEV4 GTライン・ハッチバックと、スコダ・エルロック 85 エディション、ライト・ブルーの日産リーフ
左からグレーのキアEV4 GTライン・ハッチバックと、スコダ・エルロック 85 エディション、ライト・ブルーの日産リーフ    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

恐らく、3代目リーフはエルロックやEV4と同等か、お手頃になる。運転体験は、EV4より上質で一体感に優れる。車内空間は狭めでも、日産らしく独創的なデザインには魅力がある。バランスの取れた、優れた1台が誕生したといっていい。

それでも、今回の勝者はエルロック。電費に優れ、走りは活発で実用性も勝る。電動ファミリー・クロスオーバーとして、真のオールラウンダーと呼べる実力者だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    2006年より自動車ジャーナリストとして活躍している。AUTOCARを含む複数の自動車専門誌で編集者を歴任した後、フリーランスとして活動を開始し、多くの媒体で執筆を続けている。得意分野はEV、ハイブリッド、お菓子。2020年からは欧州カー・オブ・ザ・イヤーの審査員も務める。1992年式のメルセデス・ベンツ300SL 24Vの誇り高きオーナーでもある。これまで運転した中で最高のクルマは、2008年のフォード・フィエスタSTとアルピーヌA110。どちらも別格だ。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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