古豪復活なるか? 愛するランチアの行方【新米編集長コラム#12】

公開 : 2024.12.22 07:05

8月1日よりAUTOCAR JAPAN編集長に就任したヒライによる、新米編集長コラムです。編集部のこと、その時思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第12回は自身が所有するランチアがテーマです。

復活のステップを重ねている最中

ランチアと聞いて、多くの方はストラトスやデルタ、037ラリーあたりを想像されることだろう。1906年に誕生し118周年を迎えたとなる古豪ブランドは現在、復活のステップを重ねている最中だ。

ランチアにとって2024年2月14日は記念すべき日になった。5代目ランチア・イプシロンがデビューしたからだ。振り返ればランチアは不遇のブランドとなっていた。そもそも販売で苦戦していたところに、フィアットクライスラーが統合した際に故セルジオ・マルキオンネ指揮のもと、クライスラー・イプシロンなど、両ブランドでモデルを共有したあたりで雲行きが怪しくなり、気がつけばイプシロンをイタリア国内のみで販売するローカルブランドとなっていた。

1906年に誕生したランチアは2024年で118周年という歴史あるブランド。
1906年に誕生したランチアは2024年で118周年という歴史あるブランド。    ランチア

ところがマルキオンネが亡くなり、その後、FCAとPSAの両グループが統合し、カーガイで知られるカルロス・タバレスが率いるステランティスとなったことで、事態は好転した。ローカルではあるが、イプシロンは一時期イタリア市場Bセグメントのベストセラーカーとして細々と販売を続けてきたことが、CEOに就任したルカ・ナポリターノの元でブランド再興への道に繋がったのだ。

簡単に書けばイプシロン、デルタ、ガンマの3車種をEVとして販売するのが彼のプランで、2026年以降、ランチアは100%EVのみになると明言された。

1年間途切れなかったランチアの話題

2月14日に発表されたのは、創業年に合わせて1906台限定となる『イプシロン・エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナ』。こちらは100%EVで、イタリアの高級インテリアブランドであるカッシーナとのコラボレーションとなった。

その後は3月にベルギーとオランダ市場復帰、新HFロゴ発表、4月にイプシロンのハイブリッド追加、5月にイプシロン・ラリー4HFでラリー復帰発表、6月にイプシロンHF追加、7月にフランスとスペイン市場復帰、ミキ・ビアジオンのラリーカーテスト発表、イプシロン1号車納車、10月に新型ガンマ(2026年発売)のティザースタート、12月にガンマをメルフィ工場で生産すると発表。この合間にもミッレミリアなど各種イベントにも参加し、1年間、ランチアの話題が途切れることはなかった。

既に2026発売の新型ランチア・ガンマのティザーがスタート。生産はイタリアのメルフィ工場。
既に2026発売の新型ランチア・ガンマのティザーがスタート。生産はイタリアのメルフィ工場。    ランチア

当初は100%EVのみとされたが、世界的な販売状況を鑑みてハイブリッドと併売することになったものの、このあたりまでは当初の計画どおりだろう。ただここにきて、ひとつ懸念材料がでてきた。肝心のカルロス・タバレスが、12月2日に退任してしまったのだ。UK編集部のレポートどおり、2026年初めまでの任期があったが、北米での販売不振や利益縮小を受けて、責任を負わされた形となった。

振り返ってみると、ステランティスが誕生して多くのブランドが合流しながら、現在までひとつも消滅することがなかった。もちろん効率化は進んだが、リソースを共有しながら『生き残らせた』彼の手腕は評価されていいと思う。それで救われたであろう生産者やサプライヤーが多いことは容易に想像できる。もちろんファン心理もだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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