BMW 5シリーズ3台試乗を通じて感動した話【新米編集長コラム#23】

公開 : 2025.03.17 11:45  更新 : 2025.03.22 08:40

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、新米編集長コラムです。編集部のこと、その時思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第23回は、M5を含めたBMW 5シリーズ3台試乗を通じて、その仕上がりに感動した話です。

523dディーゼルは6気筒……ではなく4気筒!

プロフィールにもあるように、私はイタリア車の左ハンドル、マニュアルしか購入したことがないので、自然とそちらの分野の取材が多くなる。そのため、昨年8月にAUTOCAR JAPANへ移籍してくるまで、縁遠かったブランドがいくつかあった。そのひとつがBMWである。

素直にBMWに対する感情を表現するなら『尊敬』だ。この業界に入って間もない頃の取材で、E36のM3とMクーペを比較する企画があり、工業製品としてのクオリティとドライビング性能の高さに、感銘を受けたのをよく覚えている。

BMW 523d Xドライブ・ツーリングMスポーツ。ボディカラーは青ではなく、ケープ・ヨーク・グリーン。
BMW 523d Xドライブ・ツーリングMスポーツ。ボディカラーは青ではなく、ケープ・ヨーク・グリーン。    平井大介

だから最新のBMWにはなるべく触れるようにしてきたが、コロナ禍で途切れてしまい、以後は機会が激減していた。そこで久しぶりに乗ってみようと思い、BMWに詳しいとある先輩に聞いたところ、勧められたのが5シリーズのディーゼルであった。

実際にお借りしたのは『BMW 523d Xドライブ・ツーリングMスポーツ』。ケープ・ヨーク・グリーンのボディカラーが絶妙で、乗る前から結構気に入ってしまった。給油したガソリンスタンドでも「いい色ですね」と声をかけられ、オーナーでもないのにすっかりいい気分に。

評判どおり、ディーゼルのフィーリングは素晴らしいものであった。踏み込んだ時のトルクが絶妙な出方で、もしかして3Lの6気筒? と思ってスペックシートを見たら2Lの4気筒! マジか!

車重は1940kgと軽くないが、足まわりの収まりもよく、先輩が勧めたのもすぐに理解できた。バイワイヤに成りたての3シリーズで違和感を覚えたパワーステアリングも、もはや全く気にならないレベルとなり、BMWらしい、切った分だけキレイに曲がるハンドリングになっているではないか。これはいいクルマだ! と感心した。

しかし、唯一気になったのはボディサイズ。全長5060mm、全幅1900mm、全高1515mmとなかなかに巨大で、何と六本木ヒルズの機械式駐車場に入らなかったのだ。全長5000mmオーバーがNGだったようで、係員の人も「新型5シリーズ、ダメなんです……」と恐縮していた。街中で動かす時の取り回し自体は悪くないので、販売面に影響しそうで惜しいと感じた。

i5の速さは赤い彗星のよう

そして乗り換えで、今度はBEVの『BMW i5 M60 Xドライブ』をお借りしたところ、これが想像の斜め上を行く凄いクルマであった。

車重が2360kgもあり、523dと比べると明らかに重い印象で、ボディの揺り返しも大きい。しかしハンドリング、クルマの動きなど、どれをとってもBMWらしいフィーリングで、5シリーズ全般がいいクルマなんだなぁと、感心する。

BMW i5 M60 Xドライブ。ボディカラーはファイアー・レッドと呼ばれる濃い赤。
BMW i5 M60 Xドライブ。ボディカラーはファイアー・レッドと呼ばれる濃い赤。    平井大介

そして何よりその加速がとんでもない勢いで、車内で思わず爆笑してしまったほど。それもそのはず、i5はフロントに261ps/37.2kg-m、リアに340ps/43.8kg-mのモーターを各1基搭載しており、単純計算で合計601ps! と、スーパースポーツ並みのスペックなのだ。

思わず、これは赤い彗星だ! と、ボディカラーも相成って感じたが、バッテリーはみるみるうちに減っていき、カタログスペックの一定充電走行距離(WLTCモード)455kmは難しい気がした。この乗り方だと300kmも走らないかもしれないが、そういうクルマとして考えれば十分に楽しめるだろう。

……とベタ褒めしてしまったが、両車に共通して気になったのは、いろいろとクルマがやり過ぎてしまうこと。例えばドアを開けたらエンジンオフになる、ステアリングヒーターが自動で入るなど、便利すぎるが故に、煩わしく感じる場面もあった。もちろん設定の問題だと思うが、この試乗期間では使いこなせず、クルマとの信頼関係を築くのに時間がかかりそうな気がしたのは書いておきたい。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。

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