フェラーリ株価暴落前日、イタリア現地取材で思ったこと(前編) 初のBEVは理想的コンセプト【不定期連載:大谷達也のどこにも書いていない話 #4】

公開 : 2026.03.12 11:25

エンジニアと自動車専門誌編集者という経歴で膨大な取材量を持つ大谷達也による、『どこにも書いていない話』を執筆する不定期連載です。第4回は、昨年開催されたフェラーリのワークショップとキャピタル・マーケッツデイがテーマ。その前編です。

マラネロで実に興味深い体験

私が調べた限りでいえば、『フェラーリ・キャピタル・マーケッツデイ』はこれまでに3回開催されている。

フェラーリのキャピタル・マーケッツデイは機関投資家や金融アナリストなどを対象に実施される経営報告会であり、業績見通しを発表する場でもある。おそらくは2015年に株式を上場したことが開催するようになったきっかけで、これまでに2018年、2022年、2025年と行われてきた。

後に『ルーチェ』という車名が発表されたフェラーリ初のBEV、そのシャシー。
後に『ルーチェ』という車名が発表されたフェラーリ初のBEV、そのシャシー。    フェラーリ

このうち、私は2025年10月9日にイタリア・マラネロで実施されたキャピタル・マーケッツデイと、その前日に行われた『フェラーリ・エレットリカ』のワークショップ(その後、車名が『ルーチェ』となることが発表された同社初のBEVに関する技術説明会)に参加し、実に興味深い体験をしたので、ここでご紹介したい。

率直にいって、10月8日のワークショップも翌9日のキャピタル・マーケッツデイで発表された内容も、私には申し分がないように思えた。

既報のとおり、間もなく正式発表となるフェラーリ初のBEVは、4輪を4基の独立したモーターで駆動することで高度なトルクベクタリングを実現。最高出力は1000psを超えるものの、一部の電動ハイパーカーのように2000psオーバーを豪語したりはしない。

無意味ともいえる高出力化のために車重を増やすよりも、軽快なハンドリングを目指したことがよく理解できる設定で、フェラーリのBEVとして極めて真っ当なコンセプトであると受けとめた。

プロサングエを上回るアジリティを期待

車重はおよそ2300kgとなる見込み。これは、エレットリカ(ルーチェ)と同じ4ドア4シーターのボディを採用する『プロサングエ』の車重(2033kg)と300kgほどしか変わらない数値である。ここに、プロサングエ譲りのアクティブサスペンションを採用。

さらに4輪操舵や4モーター方式のトルクベクタリングも搭載されるのだから、少なくともプロサングエ並み、BEVに伴う低重心設計まで考慮すればプロサングエを上回るアジリティを実現していたとしても不思議ではない。したがって、フェラーリ初のBEVとして理想的なコンセプトであるように私の目には映ったのである。

エレットリカ(ルーチェ)は4モーター方式。トルクベクタリングも搭載される。
エレットリカ(ルーチェ)は4モーター方式。トルクベクタリングも搭載される。    フェラーリ

翌日のキャピタル・マーケッツデイでの受け答えも、昨今の自動車業界の事情を考えれば納得がいくというか、むしろ好意的に受けとめたくなる内容だった。

もっとも注目されるのは、2030年段階のモデルミックス(の目標)を内燃エンジンモデル:40%、ハイブリッドモデル:40%、BEV:20%と発表したことにある。

実は、2022年のキャピタル・マーケッツデイでは2030年までのモデルミックスの目標として内燃エンジンモデル:20%、ハイブリッドモデル:40%、BEV:40%と掲げていたので、その内容に比べるとBEV分を40%から20%に『縮小』したことになる。なお、ここでいうモデルミックスは『モデル数』の比率であって、『販売台数』を示すものではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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