『空飛ぶクルマ』、どう思いますか?【森口将之の『もびり亭』にようこそ 第18回】

公開 : 2026.03.11 12:05

モビリティジャーナリストの森口将之が、モビリティに関するあらゆる話題を語るこのブログ。第18回は、国産eVTOL(電動垂直離着陸機)、スカイドライブのテストフライトについてです。

クルマとは別種の乗り物

1月下旬、東京都内で国産eVTOL(電動垂直離着陸機)、スカイドライブのテストフライトがありました。僕はこのジャンルのセミナー講師を務めたこともあるので、気になって会場の東京ビッグサイト駐車場で見てきました。

まず幸運だったのは、5日間の朝と昼の2回、合計10回が予定された中で、実際に飛んだのはわずか4回だったうちの1回に立ち会えたことです。それ以外は雨や風、整備を理由にキャンセルされました。

東京でテストフライトを行ったスカイドライブ。
東京でテストフライトを行ったスカイドライブ。    森口将之

飛行時間は約5分。地上10mまで浮上し、ホバリングのあと、70m進んで海上へ。その後Uターンして戻ってくるというルートでした。遠隔操作による無人飛行というところもニュースでした。

その内容は、自動運転車が走りはじめた頃に近く、その程度のレベルと言えばそれまでですが、東京ビッグサイトが羽田空港の管制圏内で、さまざまな制約があったことも予想されます。

個人的には、管制圏外で自由に飛ばしたほうが、見ている人は満足できたかもしれませんが、東京都が主催した飛行実証なので、この場になったのかもしれません。

気になる音は、モーターの高周波音は聞こえなかったものの、ローターの回転音はそれなりに耳に届きます。

ただ、そのサウンドは、昔乗っていたシトロエン2CVや現在の愛機トライアンフ・ボンネビルに近かったので、欠点には思えませんでした。

それよりも気になったのは、スマートフォンを機内モードにするように言われたこと。機体から50mぐらいという近い場所にいたためだと思いますが、乗る前に体重申告やセキュリティチェックが必要であることを含め、クルマとは別種の乗り物であることを教えられました。

ロールス・ロイススペクターの約4倍

冒頭でeVTOLという、グローバルで通用する言葉を使い、日本でよく使われる『空飛ぶクルマ』と書かなかった理由は、これ以外にもあります。

まずは価格。2023年にスカイドライブは個人向け予約販売を開始し、第1号機の申し込みがあったことを発表しましたが、このときの報道陣とのやりとりで、150万ドル(2億円以上)という数字が明らかにされました。同じフル電動のクルマの最高峰、ロールス・ロイス・スペクターの約4倍です。

ジョビー・アビエーションのeVTOL。
ジョビー・アビエーションのeVTOL。    トヨタ

海外のeVTOLはほとんどモビリティサービスとして使うことを想定しているので、価格は公表していません。高価であることは間違いないので、このほうがスマートだったのではないでしょうか。

ではタクシーとして乗るといくらになるか。こちらについては、今回のイベントでは当初はヘリコプター、将来はタクシーの2倍程度という話が出たようです。数年前はタクシーと同程度と言われていたので、割高に感じました。

それでも空港に急いで行きたい時など、重宝するかもしれないと思ったのですが、日本のルールでは空港のような管制圏内では管制官の指示に従わなければならず、事前予約などが必要になりそうです。

スカイドライブについては、航続距離が15kmというのも気になります。ちなみにトヨタが出資している米国ジョビー・アビエーションのeVTOLは160kmです。

ジョビーをはじめとする米英の有力機は、軍用機オスプレイにも使われているチルトローターが採用していて、巡航時はローターを前向きにすることで速度と距離を稼げることが、違いに表れているようです。

とはいえ、電気自動車では、500km以上走れても不満という人がいるわけで、ジョビーでは燃料電池を搭載することで800kmを超える機体を開発中だそうです。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

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