メルセデス・ベンツ 自動車製造に「人型ロボット」導入 グーグルAI活用で効率化を図る

公開 : 2025.03.26 19:45

メルセデス・ベンツは欧州と米国の工場に『アポロ』という人型ロボットを導入し、従業員のサポートに当たらせています。グーグルの最新AI『ジェミニ2.0』も活用して、製造工程の合理化・効率化・コスト削減を図ります。

フロア内を移動し作業員を補助

メルセデス・ベンツは、米国と欧州の製造ラインに人型ロボットと人工知能(AI)ソフトウェアを導入し、工程の合理化、効率の向上、コスト削減を図る計画だ。

現在、米国企業アプトロニック社の人型ロボット『アポロ(Apollo)』と、グーグル・ディープマインド社のAIソフトウェアが、ドイツのベルリンにあるメルセデス・ベンツのデジタル・ファクトリー・キャンパスで試験運用を行っている。

欧州と米国の工場で人型ロボット『アポロ』を試験導入
欧州と米国の工場で人型ロボット『アポロ』を試験導入    メルセデス・ベンツ

アポロは人間の動作を模倣するように設計された二足歩行のヒューマノイドロボットで、部品の運搬や製造ラインでの作業員の補助といった物流業務のテスト中だ。

固定式で反復作業を行う従来の産業用ロボットとは異なり、アポロはフロアの各所を移動し、さまざまな作業に対応することができ、製造工程のスピードアップが期待されている。

メルセデス・ベンツは、まずロボットを社内物流に導入し、ワークステーション間で材料を運搬させ、作業員のサポートに当たらせる。

また、アプトロニック社に8500万ポンド(約16億円)を超える投資を行い、製造自動化の分野においてパートナーシップを深めていく方針だ。

メルセデス・ベンツの製造・品質・サプライチェーン管理担当ディレクターであるイェルク・ブルツァー氏は、AUTOCARの取材に対し、「従業員から作業を移行させるためのトレーニングを行っています。どのように実施していくかについて検討中で、反復的で危険な作業を適切に選択することが重要です」と語った。

アプトロニック社は2016年の創業以来、米航空宇宙局(NASA)と緊密に協力してきた実績がある。メルセデス・ベンツは、最近発表したグーグルおよびグーグル・ディープマインドとの提携を活用し、アプトロニック社のロボット技術と組み合わせる。

グーグルから得るAIには、『ジェミニ・ロボティクス(Gemini Robotics)』と『ジェミニ・ロボティクス・エクステンデッド・リーズニング(Gemini Robotics Extended Reasoning)』という2種類のモデルがある。いずれも、同社史上最も高性能なAIと言われる『ジェミニ2.0』を基盤とし、テキストや画像の出力にとどまらず、物理的な動作やロボットを制御するコマンドにも対応している。

メルセデス・ベンツは品質管理と製造監視をAIで自動化し、製造上の異常の分析、欠陥の検出、ワークフローの最適化を行えるようにする。

「AIは、わたし達があまりやりたがらない作業を引き受けてくれるので、わたし達は付加価値の高い活動に集中する時間を確保できます。これは大幅な効率化になります」とブルツァー氏は述べた。

こうしたロボットの進歩と並行して、メルセデス・ベンツは改良型チャットボットなど新しいAI駆動のソフトウェアツールを導入し、デジタル製造システムも更新した。

メルセデス・ベンツは世界中に製造拠点を展開しているが、AIと人型ロボットの導入は、欧州と米国の工場に焦点を当てている。

新しい製造技術の採用が地政学的にどのような影響を与えるかという質問に対して、ブルツァー氏は「中国への導入は予定していません」と答えた。

すでに複数の自動車メーカーが次世代技術を製造プロセスに統合しており、今回のメルセデス・ベンツの措置はこうした動きに追随するものである。

2023年、AUTOCARはシンガポールにあるヒョンデのAI工場を訪問した。この工場でも、日常業務の多くをロボットが担っている。また、2024年にはJLR(ジャガーランドローバー)がロボット犬を導入し、英国のEV工場を巡回させて、各設備が正常に機能しているかを確認している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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