メルセデス・ベンツ、空前のラインナップ大刷新 今後2年間で20以上の新型・改良型を投入

公開 : 2025.03.05 07:45

メルセデス・ベンツは2年という短期間で、新型12車種、改良型8車種、コンセプト2台を発表する。エンジン車とEVのバランスを取りつつ、「リトルG」や「AMG GT SUV」などを次々と投入していく。

高級車メーカーの棚卸し

メルセデス・ベンツは今後2年間で、12車種以上の新型車と8車種の改良型モデル(フェイスリフト版)、そして2台のコンセプトカーを発表するという野心的なラインナップ拡充計画を準備中である。

過去数年の出荷台数の減少と利益の低下から脱却し、主要市場における生産と販売の安定化を目指す。

メルセデス・ベンツは新型12車種以上、改良型8車種、コンセプト2台を今後2年という短期間で発表する。(画像はビジョン・ワンイレブン・コンセプト)
メルセデス・ベンツは新型12車種以上、改良型8車種、コンセプト2台を今後2年という短期間で発表する。(画像はビジョン・ワンイレブン・コンセプト)

計画では、第2フェーズに入るEV戦略「EQ」を中心に、新世代のマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッド車といったエンジン搭載車とのバランスを取りながら、多様なモデルを展開していく。

この記事では、どのようなモデルがいつ頃に登場するのか、現在把握できている範囲で紹介したい。

2025年の新型車

この新型車攻勢の先陣を切るのは、メルセデス・ベンツの新しいモジュラー・メルセデス・アーキテクチャー(MMA)プラットフォームをベースとする6車種の新型コンパクトモデルシリーズの第一弾、CLAである。今月末には量産バージョンが正式発表される予定だ。

電気駆動の新型CLAセダンは、同社がこれまでに製造したEVの中で最も効率的なモデルと位置づけられている。航続距離を重視した仕様では、85kWhのニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーを搭載し、1回の充電で740km以上走行できるとされている。

メルセデス・ベンツCLAのプロトタイプ
メルセデス・ベンツCLAのプロトタイプ

EVモデルの6か月後には、1.5L 4気筒ガソリンエンジンとトランスミッション統合型電気モーターを搭載した最高出力190psのハイブリッドモデルが発売される予定だ。メルセデス・ベンツは「ディーゼル車並みの効率性」を謳っている。

また、命名戦略を従来よりも簡素化し、EVもハイブリッドも同じようにCLAという名称が与えられる。

その後間もなく、CLAシューティングブレークが発表される。まずEVモデルがデビューし、ガソリンエンジン搭載車は2025年後半に登場するが、いずれも駆動系はセダンと共有する。

2025年のもう1つの大きな発表となるのが、メルセデス・ベンツ初の量産EVであるEQCのフルモデルチェンジだ。新型は、9月のミュンヘン・モーターショーへ出展予定の次期GLCのEVモデルとなる。

新型GLCは、アウディ Q6 eトロンBMW iX3 、ポルシェ・マカンのライバルとして、MB:EAミディアム・プラットフォームの800V版を採用する。シングルモーター/後輪駆動、デュアルモーター/四輪駆動の構成が用意される。バッテリーには、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)とNMCの2種類が用意される見込みで、航続距離はそれぞれ約640kmと約800kmを実現すると見られている。

米国のタスカルーサ工場で生産される予定だが、最高出力など詳しい性能についてはまだ不明な点が多い。しかし、メルセデスAMGの関係者はAUTOCARに対し、計画中の上位モデル「GLE 53」では独自にチューニングされたモーターとパワーエレクトロニクスの組み合わせにより、最大600psを発揮できる可能性があると示唆している。このモデルは2026年に登場予定。

また、2025年末までに新型GLBが発表される。MMAプラットフォームをベースとする同社3番目のモデルで、初代モデルから「大幅な進化」を果たすとされている。CLAと同様、電気駆動とガソリン駆動の両方のパワートレインが用意され、アウディQ3/Q4およびBMW X1/iX1をターゲットとしている。いずれもGLBと命名されるため、従来のEQBという名称は廃止となる。

プロトタイプから、新型GLBは現行モデルよりも若干長く、幅広になり、車内空間に重点が置かれることが明らかになっている。これも、旧型のMFAプラットフォームからMMAへの切り替えによって可能になった。

新型GLBは、単なる第2世代という立ち位置にはとどまらない。2027年に予定されている通称「リトルG」のベース車としての役割も果たすことになる。

2025年の最大の発表は、おそらくメルセデスAMGのコンセプトカーとなるだろう。今年半ばに発表予定のワンオフのスーパーカーで、メルセデス・ベンツにおけるEQXXと同じように、AMGにおける将来の高性能車を予告するものだ。

関係者はAUTOCARに対し、「EQXXが航続距離を追求したように、このモデルは速さを追求する。AMGがこれまでに生産した中で最も加速性能に優れたクルマとなるだろう」と述べた。

このコンセプトカーは、2023年に発表されたビジョン・ワンイレブン・コンセプトから「それほど遠くない」と言われている。メルセデス・ベンツ傘下の英国企業ヤサ(Yasa)が開発した軸流モーターをはじめとする、AMGの次世代駆動系技術を搭載する予定である。このモーターは、メルセデスAMG GT SUVやGT 4ドア・クーペのEV版にも使用される。

さらに、このコンセプトには次世代バッテリーが搭載される予定であり、おそらくは英国のメルセデス・ベンツ・ハイパフォーマンス・パワートレインズとの共同開発による固体電池となるだろう。

一方、超限定モデルのメルセデスAMG SLマイバッハとSLピュアスピードの納車が、2025年半ばに開始される予定。同時に、メルセデスAMGはモータースポーツとのつながりを強調し、現行GTの新たな派生モデルとしてGT2 F1およびGT3 F1を発表する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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