アバルト600e スコーピオニッシマへ試乗 281psの前駆 少しのアンバランスがホットハッチ的

公開 : 2025.04.09 19:05

サベルト・バケットが2脚 明確に硬い乗り心地

インテリアでは、角ばったシェルがリアシート側の空間を削る、サベルト社製のバケットシートが2脚。スコーピオニッシマ仕様独自のアイテムで、サポート性とスポーティな雰囲気は素晴らしい。着座位置は低くないけれど。

ステアリングホイールは、握りやすいリムの2スポーク。比較的小径で、1990年代の日本製スポーツカーを筆者は思い出した。アルカンターラが随所に用いられ、鮮やかなカラーのステッチも施される。

アバルト600e スコーピオニッシマ(英国仕様)
アバルト600e スコーピオニッシマ(英国仕様)

中央のタッチモニターとメーター用モニターのグラフィックは、アバルト仕様。鮮やかなアシッドグリーンが、気分を高める。少し安っぽく、適度にスポーティなインテリアは、いかにもホットハッチ的。トランスミッション・トンネルのない、フロアも。

ただし、3万9875ポンド(約778万円)という、比較的現実的な価格を達成するため、妥協もゼロではない。プラスティック製であることを隠さない部品は少なくなく、スイッチ類はステランティス・グループで多用されるものだ。

自ずと、郊外の道での走りへ期待は高まる。車重は1640kgあるが、しっかりエキサイティングだろうか。その答えは、概ねイエスだ。

重心は明らかに低いが、軽くないボディを抑え込むため、乗り心地は明確に硬い。許容できるかどうかは、ホットハッチへどこまで日常性を求めるかで変わるだろう。フォルクスワーゲン・ゴルフ GTIのバランスがお好みなら、合致しないかも。

徐々に増大する力感 トルクステアは限定的

ルノー・スポールに乗り慣れているなら、きっと受け入れられるはず。専用サスとタイヤ、LSDが組み合わされた、やや漠然としたステアリングの感触も近い。

トルクは太いが、アクセルペダルの角度に応じて、徐々に増大していく。一部のバッテリーEVのように、瞬発力重視ではない特性が好ましい。

アバルト600e スコーピオニッシマ(英国仕様)
アバルト600e スコーピオニッシマ(英国仕様)

281psを引き出せるのは、最もシリアスなスコーピオントラック・モード時のみ。旋回中にパワーを加えるとトルクステアは生じるものの、想像ほどラインは乱れない。相当に追い込んでも、手に負えない状況にはなりにくい。

特徴を掴めば、リズミカルにカーブを縫っていける。ステアリングとアクセルペダル、LSDのバランスは高次元。カーブの中程から、トラクションを活かして加速へ移れる。リカバリーは簡単ではないが、絶対的な速さは相当なものといえる。

少しの癖を感じたのは、旋回初期。パワーがかかった状態では、車重から逃れられない。ステアリングへ伝わる情報が薄く、思い切って飛び込む自信は得にくい。また思い切り振り回しても、リアアクスルはすぐになだめられる。

600e スコーピオニッシマは、高次元なドライバーズカーにまでは仕上がっていない。航続距離は短めだ。それでも充分コンパクトで、胸がすくほど速い。そんな少しのアンバランスさが、従来的なホットハッチらしさと重なる。

◯:従来のホットハッチらしいパッケージング トルセン式LSD付き 線形的で強力、扱いやすいパワートレイン 迫力を醸し出す大胆なデザイン
△:コーナーでのライン調整が限定的 若干安っぽいインテリア 硬い乗り心地

アバルト600e スコーピオニッシマ(英国仕様)のスペック

英国価格:3万9875ポンド(約778万円)
全長:4171mm
全幅:1781mm
全高:1523mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:5.9秒
航続距離:320km
電費:5.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1640kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:51.0kWh
急速充電能力:100kW
最高出力:281ps
最大トルク:35.0kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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