エンジン版より運転体験は上 BMW iX1 xドライブ30へ試乗 自信得にくい操舵感 更に欲しい強み

公開 : 2025.04.10 19:05

X1の上を行く運転体験 自信を得にくい操舵感

公道へ出てみれば、予想通り運転体験はX1の上を行く。試乗したxドライブ30の0-100km/h加速は、5.6秒と俊足。これは、Q4 e-トロン・スポーツ55と同等のダッシュ力といえる。

速度上昇とともに勢いは鈍るものの、110km/h程度までは余裕しゃくしゃく。2085kgも車重があることを、思わず忘れてしまう。前後のモーターの出力は同等だが、カーブの出口ではリア側の方が積極的にパワーを生む印象もある。

BMW iX1 xドライブ30 Mスポーツ(英国仕様)
BMW iX1 xドライブ30 Mスポーツ(英国仕様)

回生ブレーキは3段階から調整でき、ワンペダルドライブにも対応。アクセルもそうだが、ブレーキペダルの反応も滑らかだ。

ステアリングホイールは、軽すぎるかもしれない。感触は薄く、反応が線形的ではない印象。グリップ力は高いものの、操る自信は抱きにくい。

ドライブモードをスポーツにすれば、適度に重くなるものの、標準装備されるアダプティブダンパーは引き締まり、乗り心地に影響が生まれる。個別に硬さは調整できないようだ。重めのステアリングに、柔らかめのサスペンションを選べれば、良いのだが。

ノーマルモードなら、19インチのアルミホイールを履いている限り、充分に快適。跳ねるような揺れはなだめられ、遮音性も優れる。

現実的な航続距離は、xドライブ30で370km程度といえる。寒い時期には330km程度まで落ち込むことも確かめており、このクラスでは短め。急速充電は、最高130kWまで。こちらも、速い方には入らない。

航続距離や充電速度がネック 更に強みが欲しい

iX1の英国価格は、約4万3000ポンド(約839万円)から。ツインモーターのxドライブ30では、5万2255ポンド(約1019万円)へ上昇する。ひと回り大きい、テスラモデルYの優位性が際立つといわざるを得ない。

登場から3年が経過する、iX1。当初は充分に優れた電動SUVといえたが、ライバルの進歩も目覚ましい。運転体験は確かにエンジン版より優れるものの、航続距離や充電速度は、現在では売りにできる水準とはいいにくい。更なる強みが欲しいところだ。

BMW iX1 xドライブ30 Mスポーツ(英国仕様)
BMW iX1 xドライブ30 Mスポーツ(英国仕様)

◯:充分に高速 広々とした車内 長距離を快適にこなせる余力 
△:航続距離と充電速度は競合に劣る 扱いにくいインフォテインメント・システム もう少しを求めたい操縦性と乗り心地

BMW iX1 xドライブ30 Mスポーツ(英国仕様)のスペック

英国価格:5万2255ポンド(約1019万円)
全長:4500mm
全幅:1845mm
全高:1616mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:5.6秒
航続距離:418km
電費:5.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2085kg
パワートレイン:ツイン励起モーター
駆動用バッテリー:64.7kWh
急速充電能力:130kW
最高出力:312ps/4300-1万5200rpm
最大トルク:50.2kg-m/0-4900rpm
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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