653psへ期待するほど速くない? BMW XM(2) 「M」ならもっとイイSUVを作れる

公開 : 2025.05.03 20:26

M1以来となるM部門の独自モデル、XM プラグインHVで653ps 野獣のようにイカツイ容姿 内装は上級でも実用性はX5 Mが上 軽快で正確なステアリング 乗り心地は硬い UK編集部が試乗

充分以上の総合653ps 期待ほど速くない?

BMW XMの0-100km/h加速は4.3秒と、現実社会では充分以上。発進直後から電気アシストが加わり、確かに相当鋭い。反面、システム総合653psへ期待するほど、速くは感じられないかもしれない。

BMWは、車重を巧みに包み隠す技術に長けている。それでも、2710kgは流石に重すぎるようだ。基礎骨格とするのは、BMWのCLARアーキテクチャ。優れた汎用性とねじり剛性を得ているが、軽いものではない。最新のM3が軽くない理由も、コレにある。

BMW XM(北米仕様)
BMW XM(北米仕様)

さらにXMでは、補強用ブレースが追加され、プラグイン・ハイブリッドが載っている。豪華な内装と23インチのアルミホイールを組み付ければ、重くなって不思議ではない。

起動時のデフォルトはハイブリッド・モードで、発進時はほぼ無音。アクセルペダルを必要なだけ踏むと、正確なタイミングで4.4L V8ツインターボエンジンが即座に始動し、猛烈なエネルギーを加えてくれる。低速域での反応は、やや物足りないが。

エンジンとモーターは、それぞれ特徴的なサウンドを奏でる。この2つが重なると、なかなかエキサイティング。魅力的なパワートレインだといっていい。

軽快で正確なステアリング 乗り心地は硬い

ステアリングは、同クラスにある性能自慢のSUVより軽快。反応も正確で、操縦性にはMらしさが香る。それでもポルシェカイエンのように、挙動を正確に伝達するコミュニケーション力までは備わらない。

サスペンションはスチールスプリングにアダプティブダンパー、アクティブアンチロールバーという組み合わせ。姿勢制御に優れ、シャシーバランスの良さを伺わせる。

BMW XM(北米仕様)
BMW XM(北米仕様)

ドライブモードは、ステアリングホイール上の赤いMボタンで切り替えられる。スポーティ度を上げるほど、身のこなしは鋭くなり、秘めた実力が顕になる。

とはいえタイヤはかなり太く、姿勢制御や操縦性は安定志向で、滑沢な流暢さまでは感じにくい。運転する楽しさは、BMW M5に及ばないだろう。

乗り心地は、基本的に硬め。低速域では路面の影響を受けがちで、落ち着きは薄い。コンフォート・モード時でも、シリアスなM3以上に快適というわけではない。

スタビリティ・コントロールをオフにすると、4WDサンドモードが選べるようになる。四輪駆動システムとMディファレンシャルの特性が、砂漠へ最適化。北米や中国の奥地にも、対応したSUVになる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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