眺めるだけで気分が良くなる ミニ・クーパー S 長期テスト(4) 従来的レシピに魅了される

公開 : 2025.05.04 09:45

先代の基礎骨格を土台に、車名も新たに新世代へ一新したミニ・クーパー オシャレでプレミアムな小型ハッチバックの訴求力は? エンジン仕様の日常との親和性は? 英編集部が深掘り

眺めているだけで自然と気分が良くなる

初春の英国は、雨がちで肌寒い。書斎は納屋と同じくらい冷えている。路面はうっすら濡れている。それでも、ダークグレーのハッチバックを眺めていると、自然と気分が良くなる。明日は、グレートブリテン島中部のソリフルへクルマで向かう予定がある。

ロンドンの南にある自宅からソリフルを訪ねる場合、多少重たい荷物を運ぶ必要があっても、普段の自分は電車を選ぶ。英国の道路環境は褒めにくく、路面が濡れていて大きな水たまりだと思って突っ込むと、タイヤを傷めるような穴だったりすることがある。

ミニ・クーパー S スポーツ5ドア(英国仕様)
ミニ・クーパー S スポーツ5ドア(英国仕様)

高速道路を選べば、水しぶきを盛大に浴びる。普段以上に事故のリスクは高い。

それでも、今はダークグレーのミニ・クーパー S スポーツ 5ドアが筆者にはある。走らせないなんてもったいない。高速道路と一般道を繋いだ魅力的なルートを練り、1時間ほど運転することにした。

クルマ好きを魅了する従来的なレシピ

数回ステアリングホイールを握ったが、これまで試乗してきた普段使いに適したモデルの中で、このクルマは最も少ない妥協で楽しめる1台だと感じている。晴れた日曜日の早朝に、ドライブしたいと思わせる。

充分に快適で、燃費が酷いわけではなく、走りに優れ、気軽に出発できる。200馬力以上のターボエンジンが、市街地をスルスル走り回れる適度な大きさのハッチバックボディに載っている。従来的なレシピは、今でもクルマ好きを魅了できる。

ミニ・クーパー S スポーツ5ドア(英国仕様)
ミニ・クーパー S スポーツ5ドア(英国仕様)

前回お伝えしたとおり、長期テスト車両は3ドアのクーパー Cから、5ドアのクーパー Sへ変更になった。見た目は凛々しくなり、しっかり速く、ステアリングは好感触。レッドの差し色が、車内で効いている。グレードアップする価値を感じる。

それでも、丸いタッチモニターが備わるダッシュボードは未来的だが、2025年には前時代的なパッケージングであることは否定できない。洗練されたパワートレインやスタイリングを得ていても。

電動の時代にもホットハッチは生き残れる

エンジンで走るホットハッチは、かつて人気カテゴリーといえたが、近年は仲間がすっかり減ってしまった。トヨタGRヤリスは、相手にならないほどシリアス。フォードフィエスタ STは、生産が終了している。

英国試乗で真っ当なライバルといえるのは、フォルクスワーゲン・ポロ GTI。しかし、販売数は低調で、現役引退が迫っている。

ミニ・クーパー S スポーツ5ドア(英国仕様)
ミニ・クーパー S スポーツ5ドア(英国仕様)

それを横目に、電動化は順調に進んでいるように見える。アバルト500eにアルピーヌA290だけでなく、ミニにも電動のクーパー SEがある。エネルギー・シフトを経ても、スポーティなホットハッチは生き残れそうだ。

2026年には、フォルクスワーゲンからGTIを冠したハッチバックが登場するらしい。ゴーカートのような操縦性を、獲得するという。クルマ好きなら、少しは心が動くはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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