やっぱり黄金期だった? 輝かしい1990年代のクルマ(1) アウディTT E39型BMW 5シリーズ

公開 : 2025.04.26 09:45

1990年代がクルマ好きにとっての黄金期だった? 今にはない純粋さと個性が宿るモデルたち 愛おしい気持ちは思い込みではないのか? UK編集部の気になる10台を試乗で振り返る

1990年代のクルマへの思いは強まる一方?

1990年代が黄金期だったと振り返る、クルマ好きは少なくないだろう。現代のモデルが変化するほど、思いは強まる一方といえる。

さほど昔には感じられなくても、実際は30年ほど前ということになる。当時10代の青年だった読者は、恐らく50歳前後をお迎えのはず。この年代のクルマは、幅広い年齢層から愛されている。今にはない、純粋さと個性を宿すからだろう。

AUTOCARのUK編集部が選んだ、1990年代の気になるモデル
AUTOCARのUK編集部が選んだ、1990年代の気になるモデル    マックス・エドレストン(Max Edleston)

社会学者は、1990年代は生活がシンプルだったと解説する。経済学者は、近年より活気があったと分析する。携帯電話が普及し、インターネットという言葉が耳に届き初めた頃だった。コンピューターは、まだ大きく重たい箱だった。

筆者が1990年代を簡潔にまとめるなら、「音楽に映画、市民、経済、クルマのより良い時代」。自動車もシンプルだった。気候変動は大問題になる前で、安全規制に対する制限は、驚くほど緩やかだった。

フォルクスワーゲンが、ディーゼルエンジンで不正をするのは20年後。各メーカーは、電気自動車への巨大な投資へ頭を抱える必要はなかった。

共通プラットフォームから異なるモデルを生み出すという、新たな考え方は進んでいた。それでも、スタイリングの自由度は遥かに高かった。

アウディTT:コンセプトカーが現実へ舞い降りた

この時代へ強い関心を寄せるのは、AUTOCARのUK編集部も同じ。1990年代の気になるモデルへ試乗しようというアイデアは、順調に実現することになった。実際に特徴を理解し、愛おしさが思い込みではないのか、確かめたいという考えが一致した。

かくして、揃ったのは10台。アルファベット順に、魅力を振り返っていこう。

アウディTT(初代/1998〜2006年/英国仕様)
アウディTT(初代/1998〜2006年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

まずは、1998年発売のアウディTT。歴代の共通プラットフォーム・モデルの中で、最も成功した1台だといえる。コンセプトカーは1995年に発表。量産車は、フォルクスワーゲン・ゴルフがベースになっていた。

1.8Lターボエンジンの最高出力は、228ps。力強さと軽快な操縦性、高品質なインテリアに、心を奪われた人は少なくないだろう。3代目へ進化し2023年11月に生産を終えたが、カリフォルニアのデザインスタジオで誕生した初代の容姿は、今も際立っている。

アウディの中で突出して個性的。マット・プライヤーは、発表当初から気に入っていた。「正真正銘、コンセプトカーが現実へ舞い降りましたね」。と、当時を回想する。27年も過ぎることが信じがたい。

当時は子どもだったイリヤ・バプラートも、感心を顕にする。「スポーツカーとはいえませんが、快適で運転しやすい。運転姿勢が良くて、変速は滑らか。エンジンは力強く回り、グリップも高い。日常的に使える、デザイン・アイコンですね」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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