【小さい、かわいい、頼りになる】ホンダのマイクロモビリティCiKoMaに茨城で試乗
公開 : 2025.05.28 08:05 更新 : 2025.05.29 12:07
街中の短距離移動を支えるマイクロモビリティの重要性を考えたホンダが開発した、ホンダ独自のAIを搭載したマイクロモビリティに、森口将之が試乗しました。
『1日のクルマの移動距離10km未満』が65%
ホンダはクルマやバイクだけでなく、飛行機、船外機、耕運機なども作っている。モビリティカンパニーという言葉がふさわしい会社のひとつと言えるだろう。
クルマやバイクより小さなパーソナルモビリティも、座って乗れるモビリティロボット『UNI-ONE』、ホンダからスピンアウトしたスタートアップが開発した立ち乗り3輪モビリティ『ストリーモ』などがある。もちろん自動運転についても、クルマだけではない。

ホンダでは、すべての人に『生活の可能性が拡がる喜び』を提供するというテーマに基づいた『2030年ビジョン』を掲げている。そのためには知能化モビリティとして、自動運転や運転支援とともに、街中の短距離移動を支えるマイクロモビリティが重要であると位置付けているのだ。
このビジョンを受けて、ホンダの研究開発子会社である本田技術研究所では、人と分かり合える独自のAIである協調人工知能『Honda CI(Cooperative Intelligence)』を搭載した、Honda CIマイクロモビリティを開発している。
自動運転や運転支援にも投入されるHonda CI、マイクロモビリティでは移動をサポートする『CiKoMa (サイコマ) 』と、歩行をサポートする『WaPOCHI (ワポチ)』を開発している。
今回はCiKoMaに試乗するとともに、本田技術研究所先進技術研究所で知能化・安全研究ドメイン統括/半導体研究ドメイン統括のエグゼクティブチーフエンジニアを務める安井裕司氏に話を伺った。
「開発のきっかけは、都市部も地方も1日のクルマの移動距離は10km未満という人が65%もいることでした。環境保護のためには自転車や電動キックボードが望ましいけれど、雨に濡れるし、運べる荷物は限られます。安全のためにもキャビンがあると良いと考えました」
さらに地方は運転免許返納や公共交通の減便廃止という流れがあるので、自動運転としたうえで、移動先での乗り捨てを可能として利便性を高める予定だという。
モビリティサービスはインフラやインターフェイスも重要
技術実証実験の場として選ばれたのは、茨城県南西部にある常総市だ。この地を選んだ理由は、自動車教習所が廃校になっているというニュース聞いたのがきっかけだという。市長に掛け合って、ここを自動運転のテストコースに仕立てたのだ。
その席で市長から、『アグリサイエンスバレー常総』の話が出た。農作物を育てる第1次産業だけではなく、加工や製造といった第2次産業、販売などの第3次産業を掛け合わせた『第6次産業』の拠点として、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)常総インターチェンジ周辺に2年前にオープンしたものだ。

この地は南北方向に長いので、敷地内の移動の足が欲しい。しかも、常総市も他の多くの地方同様、過疎化や高齢化の問題がある。健康寿命伸ばすためにも、歩いて暮らせるまちづくり(ウォーカブルシティ)が必要と考え、実証実験を始めることになったそうだ。
現在はアグリサイエンスバレー常総内の『道の駅常総』から、観光農園『グランベリー大地』までの約850mの歩行者用道路で、来場者を対象としたCiKoMaによる自動走行の乗車体験機会を提供している。
ちなみにWaPOCHIは、人混みでの先導や買い物での荷物運搬を助けるロボットで、グランベリー大地の屋外敷地内で、いちご狩り利用者の荷物を積んで先導もしくは追従を行った。手ぶらでいちご狩りを楽しむことができるなどのメリットがあったという。
モビリティサービスは乗り物それだけではなく、インフラやユーザーインターフェイスも重要になる。CiKoMaで苦労したのも、その点だったようだ。
「既存のタクシーアプリでも、何度もボタンを押すのが面倒、一度ボタンを押したらあとは言葉で依頼したいという声がありました。とはいえ、あいまいな表現が多い移動リクエストの言葉を自動運転に反映させるのは大変で、そのための機能を作って入れることに苦労しました」
現在はレベル2の自動走行なので運転手が必要であり、4人乗りの車体を作ったとのこと。近い将来、運転手不要のレベル4自動運転に進化した際には、2023年のジャパンモビリティショーに参考出品された2人乗りの『CI-MEV』のような車両の追加も検討しているという。