【第6回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:MaaSは今どうなっているか?
公開 : 2025.03.12 17:05
モビリティジャーナリストの森口将之が、モビリティの今と未来を語るこのブログ。第6回は、話題に上らなくなったMaaSを改めて考えます。佐賀県での実体験を通して見えたのは、MaaSの便利さと課題、発展の余地でした。
MaaSはなぜ下火になったのか
5年前はひんぱんに目にしていたのに、今はごぶさた気味になってしまったモビリティ関連の言葉のひとつに、MaaSがあります。
この連載の第1回でも紹介しましたが、MaaSとはモビリティ・アズ・ア・サービスの略で、これまで別々だった公共交通やパーソナルモビリティのシェアリングなどの経路検索や運賃決済を、単一のスマートフォンアプリに統合することで、マイカー移動に近いシームレスな移動を提供するというものです。

MaaSが生まれたのは北欧フィンランドで、2006年に構想が生まれ、10年後に首都ヘルシンキで、世界初のMaaSアプリである「Whim」がリリースされると、世界的に話題となりました。
それが鎮静化してしまった理由のひとつは、新型コロナウイルスです。感染拡大当初、公共交通を使っての外出を控えるように言われたことを、覚えている人もいるでしょう。欧米や中国のようにロックダウンまで発展したところもありました。
公共交通を活用して移動を促すMaaSにとっては、強烈な逆風になりました。これが影響したのか、世界初のMaaSアプリWhimの運営会社が、昨年に破産を申請したというニュースもありました。
一方日本では、国土交通省や経済産業省が、国を挙げてMaaSの普及を目指すべく、補助金を用意して実証実験を募りました。しかしフタを開けてみると、年度末の短期間に実験をやって終わりという、利用者のためとは思えない事例がいくつも出てきました。そのうちにコロナ禍となり、実証実験の数は減っていきました。
MaaSを体験:佐賀県の場合
なのでMaaSはオワコンだと感じている人もいるでしょう。しかしコロナ禍の前から国内外の地域交通を見てきた僕は、むしろ派手な騒ぎが収まり、本質を見据えることができるようになったと、好意的に捉えています。
そもそも日本の公共交通はアナログ主義でした。デジタル化すれば、バスに乗る人がどこからきて、どのバス停で乗ったかなどのデータが取れるので、利用状況に合わせた路線や本数を組みやすくなります。つまり利用者減少や運転士不足といった悩みを解消する可能性があります。よって積極的に展開する地域もいくつかあります。

2022年にサービスをスタートした佐賀県の『さがMaaS』もそのひとつ。トヨタファイナンシャルサービスが開発したマルチモーダルモビリティサービス『my route』を活用したもので、先月下旬に佐賀市を訪れたので使ってみました。
首都圏から佐賀市に向かうには、飛行機でのアクセスが一般的で、僕も九州佐賀国際空港から用事のあった佐賀駅前に行くつもりでした。
ただ佐賀県はデザインに力を入れているということで、展示などがある佐賀県庁と佐賀県立博物館も訪ねたいと思っていました。そして早稲田大学の卒業生としては、創設者である大隈重信の記念館も外せません。
上に挙げたスポットはそれぞれ微妙に離れており、バスを何度も利用する必要が出てきました。そこでMaaSを活用することにしたのです。
さがMaaSの使い方としては、目的地までのルートを検索し、そこで紹介されるチケットを買う方法と、最初からチケット購入を選ぶ方法があります。僕は後者の手法で『佐賀市営バス全線フリー1日乗車券』を買いました。11の施設で使える特典もついていて、大隈重信記念館の入館料を割引してもらえました。

