新型『スズキ・アルト』開発責任者とデザイナーに訊く 理想の軽は「?」がつかないクルマ ボディ剛性&燃費改良で素性の良さ向上

公開 : 2026.03.17 12:05

昨年、『スズキ・アルト』がマイナーチェンジしました。内外装以外にもボディに手が入れられ、剛性が向上しているそうです。そのポイントを、開発責任者とデザイナーから聞くことができました。内田俊一がレポートします。

やりたかったことは「違和感なく走るようにする」こと

昨年、『スズキアルト』がマイナーチェンジ。内外装以外にもボディに手が入れられ、剛性が向上している。そのポイントを、開発責任者とデザイナーから聞くことができた。

アルトの購入理由として、スズキのラインナップの中でも購入しやすい価格や、軽ナンバーワンの燃費が挙げられる。そこで、マイナーチェンジでもその部分は伸ばしながら、最新の予防安全支援システムを搭載している。

左が開発責任者の竹中秀昭さん、右がデザイナーの岩崎宏正さん(崎はたつさき)。車両は初代アルト。
左が開発責任者の竹中秀昭さん、右がデザイナーの岩崎宏正さん(崎はたつさき)。車両は初代アルト。    内田俊一

開発責任者の竹中秀昭さんは、「アルトの基本は低価格、低燃費でありながら、安心、安全を求めるお客様に向けたクルマ」と位置づけ、今回の改良でもその点はバランスを取りながらしっかりと踏襲したという。その上で竹中さんがやりたかったことは、「違和感なく走るようにする」こと。そこで車体にも手を入れた。

「改良前は、ボディがちょっとやわらかい、ねじれる感じがしていたんです」

同時に、ステアリング中央付近の遊びや、切り始めの違和感も気になった。前述のボディ剛性も含めて、ステアリングを切った時にまず車体がよじれてからサスが動いて、という順番を感じたのだ。

そこで、剛性を上げるために、バックドアを含めたドアの開口部周囲に構造用接着剤を、フロア周りには減衰接着剤を使用。特に開口部にはひずみが溜まりやすく、応力も出てしまうからだ。

その結果、車体がねじれることなく、足がしっかりと動ようにセッティングができた。パワステもリチューニングして、違和感がかなり減り、クルマそのものの素性の良さがアップしたという。

実際は軽ナンバーワンを誇っているものの

購入理由に挙がった燃費だが、実際は軽ナンバーワンを誇っているものの競合の方が良いと思われており、竹中さんはアピール不足を認めている。

そこでさらに燃費向上策を講じ、ハイブリッドは0.5km/lほど(27.7km/Lから28.2km/L)、アイドルストップがない仕様は0.6km/L(25.2km/Lから25.8km/})に向上。そのためにタイヤも変更している。

昨年マイナーチェンジを受けたアルト。軽ナンバーワンの燃費がさらに向上した。
昨年マイナーチェンジを受けたアルト。軽ナンバーワンの燃費がさらに向上した。    内田俊一

転がり抵抗の少ないタイヤは燃費には有利だが、乗り心地が硬くなったり、ロードノイズも大きく、操安性も落ちたりしやすい。これが、ボディ剛性向上やパワステのチューニングにも手が付けられた背景でもある。

竹中さんは、理想とする軽自動車を「乗った時に『あれ?』、『おや?』とクエスチョンマークがつかないクルマです」と表現する。

素直に思った通りに、意図通り動くクルマ。あるべきところにあるものがあって、走る、曲がる、止まるが違和感なくできる。「それをシンプルな構成でやるのが、軽自動車の目指すところ」と明言。やはり素性の良さが重要なのだ。

実は竹中さんは、自身でもアルトワークスを楽しんでおり、会社が休みの時には、「今後のアルトをどうしようか」と悩みながら、2000kmほど乗ってくることもあるという。ただし「現行ラインナップにワークスはないので、そんなことも考えつつ……」と笑う。

もちろん現状は「全く明言できません」としながらも、今回のマイナーチェンジで素性が良くなったことを受け、「現在、マニュアル車もターボもありませんが、今の経営や市場環境の中で何ができるのか。少量台数でもスズキらしいクルマを作っていけたら」と将来に向けての期待を語った。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    Shunichi Uchida

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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