【伝統よりもハンドリング】前作は即完売!ランドローバー・レンジローバー・スポーツSVエディションツーに見る英国車の真価

公開 : 2025.07.17 12:05

飛ばしてもなお英国車がそこにある

そんなわかりやすいキャラクターだった先代SVRと比べると、最新のSVは路面のタッチもやさしく、排気音が抑えられているため、いつの間にかスピードが出ている印象。

速度や走行モードによる『変貌の幅』は技術的な進歩の賜物だ。一方静かになった音に関しては、規制の厳しさが感じられる。それでも個人的には今回のSVくらいの音量がちょうどいいと思う。以前のそれはやりすぎだ。

SVの真価は、優しさではなくムチを入れた時の絶対的な速さにある。
SVの真価は、優しさではなくムチを入れた時の絶対的な速さにある。    神村聖

静かに走らせれば、見た目も含めてノーマルのレンジローバー・スポーツを装うことができそう。でもそれなら、わざわざ2474万円(試乗車はオプション気味で2800万円超)もするSVを手に入れる必要はない。SVの真価は、優しさではなくムチを入れた時の絶対的な速さにあるのだ。

車体下から覗くとアルミ削り出しのような銀色のダンパーと、そこに繋がる複雑なオイルホースが見える。ピッチングとローリングをしっかりと抑え込み、それでいてボディをソフトに支える6Dダイナミクスはさすがだ。

それなりに質量は感じるが、それでも思いどおりのラインでコーナーをトレースできる。このギミックがなければ、エンジニアもSVを作ろうとは考えなかったはずである。

加速する、曲がる、止まるという一連の動きには、『強烈だがしっとりとして粗野ではない』という共通項が感じられた。最高出力635ps、車重2570kgでもなお、その走りには他国のそれとは違い、英国車ならではのストローク感や表情が込められている。

日本の交通事情を考えれば、SVのパフォーマンスをフルに発揮できる場面は多くないだろう。だが知的でありながら屈強なドライビングダイナミクスに心酔し、『手に入れたい!』となる人の気持ちはよくわかるのであった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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