経済成長を支える「鉄の箱」 フォード・トランジット Mk1からMk3(1) 銀行強盗も重宝?
公開 : 2025.09.06 17:45
経済成長に貢献する質素な鉄の箱、トランジット 短いエンジンルームへ収まるV型4気筒 銀行強盗も重宝した能力 洗練度を増した3代目 最先端を突っ走った商用バンをUK編集部が振り返る
英国の経済成長に貢献した質素な鉄の箱
ロンドンで見かける、典型的な商用バンは? 恐らく、そのフロントには楕円形のブルー・ロゴがあしらわれている。企業の業績だけでなく、国家の経済成長にも貢献してきたといえるのが、質素な鉄の箱、フォード・トランジットだ。
トランジット Mk1(初代)の発売は1965年。他社のモデルとは一線を画す商品力で、英国とは切っても切れない存在へ進化してきた。誕生60年という節目に、初期の3世代を並べて、功績を振り返ってみるのはどうだろう。

フォードが「レッドキャップ」と名付けた開発プロジェクトの成果は、直前までVシリーズを名乗る予定だった。だが1953年発売の商用バン、フォード・タウヌス・トランジットの後継へ近い存在として、モデル名が継承された。
短いエンジンルームへ収まるV型4気筒
「Mk1の発売から数か月で、3300万ポンドぶんの注文を集めた記録があります。他社は、競合モデルの開発を中止したほど。トランジットが、すべてを変えたといえますよね」。トランジット・バン・クラブの創設者、ピーター・リー氏が説明する。
圧倒的な支持を集めた理由の1つが、コスパ。ガソリンエンジンで走り、最大積載量610kgのショートホイールベース仕様を、542ポンドから購入できた。15シーターのマイクロバス仕様も、税込みで997ポンドだった。

「運転席と助手席の間にエンジンがないレイアウトで、Mk1は革命をもたらしました。フロントの短いエンジンルームへ収まる、V型4気筒が開発されたんです。車内は暑くなりにくく、シートを外さずに点検・整備が可能でした」
既存の商用バンより全幅が広く、キャビンには大人3名が並んで座れた。運転感覚は乗用車へ近く、荷室には一般的なパレットに載った荷物を2セット積めた。ロンドン動物園では、子どもの像を2頭運んだという記録もある。
劣悪な環境で移動していた当時の労働者
1960年代に入ると、電機メーカーのゼネラル・エレクトリック社(GEC)が社用車に採用。グレーのプライマー仕上げで納車されると、当時のコーポレートカラー、ブラックとイエローで塗装された。目を引く配色は強い印象を生み、ミニカーにもなった。
今回ご登場願ったMk1は1965年式で、まさにブラック&イエローのGEC仕様。発進させると、ブレーキは強力と呼べず、ステアリングの反応は曖昧。直進安定性も高くはない。当時の外回りの労働者は、劣悪な環境で移動していたことがわかる。

それでも、醸し出される全体的な堅牢さが、信頼感へ結びつく。シフトレバーの動きは、機械的なソリッド感があり正確。運転する魅力の1つを構成する。











































































































