メルセデス・ベンツ 全固体電池で1205km走破 5年以内に「ゲームチェンジャー」投入

公開 : 2025.09.11 06:45

メルセデス・ベンツは、全固体電池を搭載した『EQS』でドイツからスウェーデンまで1205kmを走行するテストを実施。途中で充電することなくゴールしました。2020年代の市場投入を目指しています。

ドイツからスウェーデンまで充電なしで到達

全固体電池のプロトタイプを搭載したメルセデス・ベンツEQS』が、途中充電なしで1205kmを走行した。技術開発における画期的な成果だ。

メルセデス・ベンツは、市販のEQSセダンを改造したテスト車両を用いて、本社のあるドイツのシュトゥットガルトからスウェーデンのマルメまで走行。ゴール時にも航続距離はあと137km残っていたとしている。

全固体電池を搭載したEQSのテスト車両
全固体電池を搭載したEQSのテスト車両    メルセデス・ベンツ

両都市間の通常ルートは約1015kmだが、同社は地形や交通状況を考慮し、フェリー航路を避ける代替ルートを設定した。これにより総走行距離は160km以上延長された。

全固体電池は米ファクショナル・エナジー社のセルを使用し、パッケージは英国ノーサンプトンシャー州ブリックスワースにあるメルセデスのF1拠点との共同設計だ。重量と設置面積は標準のEQSの液体リチウムイオンバッテリー(最大774kmの航続距離)と「同等」とされるが、エネルギー容量は25%向上しているという。

このバッテリーパックは、使用中のセルの膨張・収縮を制御する空気圧アクチュエーター付きのフローティングセルケースを採用し、安定性と寿命の改善を図っている。

メルセデス・ベンツは当初、この全固体電池により航続距離が約1000kmに延伸されると見積もっていた。

最高技術責任者のマルクス・シェーファー氏は、全固体電池を「ゲームチェンジャー」と称し、今回のテスト走行により「新たなレベルの航続距離と快適性」を実現できることが示されたと述べた。

シェーファー氏はさらに、メルセデス・ベンツが全固体電池の市場投入を2020年代中に目指していると付け加えた。全固体電池は長年EVに革新をもたらす技術と見なされてきたが、開発の遅延に直面してきた。

ライバルのフォルクスワーゲン・グループも、同時期での実用化を目標としている。同グループはミュンヘン・モーターショーで全固体電池プロトタイプを公開したが、四輪車ではなく、傘下ブランドであるドゥカティ製のバイクを使用している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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