VWグループ、2030年までに全固体電池を量産化 ドゥカティのプロトタイプ公開

公開 : 2025.09.09 18:25

フォルクスワーゲン・グループは量産車への全固体電池導入を目指し、ドゥカティ『V21L』をベースとするプロトタイプの試験運用を開始しました。バッテリーセルの耐久性向上につながる可能性もあります。

電動バイクで試験開始

フォルクスワーゲン・グループは、2030年までに全固体電池の量産化を目指し、ドゥカティの電動バイクで試験運用を開始している。

全固体電池を搭載したグループ初のプロトタイプは、ドゥカティのMotoEレーサー『V21L』をベースとしている。技術が確立すれば、クルマへの転用も可能だという。

ドゥカティV21Lをベースとする全固体電池プロトタイプ
ドゥカティV21Lをベースとする全固体電池プロトタイプ

全固体電池は、従来の液体電池よりもエネルギー密度が高く、EVの航続距離向上や軽量化を実現できるとされている。充電の高速化も可能だ。

そのプロトタイプにドゥカティが選ばれたのは、電動バイクが抱える重量、航続距離、パッケージングといった問題を解決する鍵となり得るからだ。ドゥカティのクラウディオ・ドメニカリCEOは「完璧な組み合わせ」と評している。

V21Lでは、バッテリーパックがシャシーの応力部分として機能しており、電気自動車の「スケートボード」型シャシーよりもはるかに大きな力にさらされる。そのため、この試験で全固体電池セルの耐久性向上につながる新たな知見が得られるかもしれない。

全固体電池のセラミック電解質内部では自然化学反応により亀裂が生じ、外部からの力によってさらに悪化する可能性があり、開発の障壁となっている。

フォルクスワーゲン・グループは、バッテリー製造子会社PowerCoと全固体電池メーカーのクアンタムスケープ(QuantumScape)が、2020年末までに商業的に実現可能なソリューションの開発に取り組んでいると発表した。

その中核となるのが、新設計の角柱型セル『ユニファイド・セル』で、フォルクスワーゲンの新型IDポロやIDクロスに採用される予定だ。既存モデルのバッテリーパックを大幅に変更することなく、全固体電池への交換が可能になるという。

ユニファイド・セルは、フォルクスワーゲン・グループが今後展開するEVモデルの80%で使用できるように設計されており、全固体電池搭載の量産車が早期に登場する可能性がある。

全固体電池の実用化を急いでいるのはフォルクスワーゲンだけではない。日産は以前、2028年に初の全固体電池EVを発売すると発表している。また、複数の中国メーカーが、従来の液体リチウムイオンバッテリーと比べて液体電解質を大幅に減らした半固体電池のEVを販売している。メルセデス・ベンツも全固体電池を搭載したEQSをテスト中であり、航続距離が25%向上して1000km以上になるとしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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