【現役デザイナーの眼:新型メルセデス・ベンツGLC】伝統を光で表現した大きなグリルもプロポーションとはアンマッチ

公開 : 2025.09.17 11:45

欧州ブランドのデザインで思うこと

前述のとおり、今回のIAAではメルセデス、BMWアウディという、自動車業界を牽引するドイツのプレミアムブランドが揃って新型EVを発表しました。しかし新しい提案があったかというと、少なくともエクステリアではなかったように思います。

3社とも過去の名車のモチーフをデザインに取り入れていますが、立体構成や表現などにおいて新しさがなかったのは少し気になるんです。もちろん保守的なデザインでも魅力があれば良いのですが、ではプロポーションを煮詰めているかというとそうも見えません。

リアを見るとポルシェ・マカンのようなクーペライクのSUVに近い。横長のリアコンビはこれまでのメルセデスにはなかったデザイン。
リアを見るとポルシェ・マカンのようなクーペライクのSUVに近い。横長のリアコンビはこれまでのメルセデスにはなかったデザイン。    メルセデス・ベンツ

過去のアーカイブを頼りにデザインすること自体は悪いと思っておらず、例えばスニーカーでは、何十年前のデザインが今でも定番になってます。歴史あるブランドの戦い方として、名作のリバイバルやオマージュはひとつのトレンドでもあります。しかし欧州自動車メーカーのそれは、表層的になっていないか? という危惧を感じてしまうんです。

それに欧州ブランドでも、ボルボレンジローバーといった欧州以外のメーカーが資本の方がデザインの本質に向き合っていたり、『AVATR』や『NIO』など一部中国ブランドのように、シンプルで提案性あるデザインを行っている例もあります。

特に中国メーカーはここ何年も欧州を中心とした世界中からカーデザイナーを招き入れているという話も聞き、ここ数年で急激にレベルが高くなっているように感じます。欧州の自動車業界が危機感を持っているのかが気になりますが、彼らのデザインを見て育った身としては、その底力に期待したいところです。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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