VW製ライトで寄り目顔 モーガン・エアロ8 UK版中古車ガイド(1) BMW V8で満ちる体験

公開 : 2025.10.11 17:45

アルミ製シャシーにBMWのV8を得たエアロ8 寄り目のライトはシリーズ3で矯正 入手困難な部品が維持の課題 多くの人が満たされる運転体験 UK編集部が中古車で魅力を振り返る

新しいアルミ製シャシーにBMWのV8

無二の個性で、1930年代から確かな支持を集めてきた伝統のモーガン。大きな変化には、小さくないリスクが伴う。1963年に投入されたプラス4 プラスは、同社の期待を裏切る結果に終わった。約40年も、次の機会を伺うことになったほど。

満を持して登場したのが、エアロ8。シャシーにはコーティングされたアルミニウム材を採用し、高精度にレーザーカットされ、接着剤で組み立てられた。フランス南部のミラマ・サーキットを使用し、操縦性と快適性の調整へ時間も割かれた。

モーガン・エアロ8(2000〜2019年/英国仕様)
モーガン・エアロ8(2000〜2019年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

ボディパネルは職人の手打ちではなく、外注先へ依頼。アルミ板を400度に加熱し、圧縮空気で成形する、スーパーフォーミング加工で仕上げられた。しかし、軽量・強固なボディフレームには、従来どおり木材(アッシュ)を使用。伝統の継承が主張された。

エンジンを提供したのはBMW。当時の740iに載っていた4.4L V8ユニットをベースに、スポーツカーへ相応しい性能が引き出された。ABSやトラクション・コントロールはなかったが、サイドウインドウとエアコン、クルーズコントロールは備わった。

寄り目はシリーズ3で矯正 部品入手が課題

シリーズ1のヘッドライトはフォルクスワーゲン譲りで、寄り目の表情は意図したものではなかった。2004年のシリーズ2で、ボディを拡幅。その直後のシリーズ3では、当初の想定通りミニ譲りのヘッドライトを獲得し、目つきは矯正された。

エアロ8は、2002年と2004年にルマンへ挑み、クラス優勝を果たす。2005年には、学生だったデザイナーのマット・ハンフリーズ氏の提案で、ファストバックボディのエアロマックスが登場。2007年にはAT仕様も追加され、2019年まで生産は続いた。

モーガン・エアロ8(2000〜2019年/英国仕様)
モーガン・エアロ8(2000〜2019年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

スタイリングの印象深さは、今でも変わらない。近年も現実的な価格で流通しているが、部品の入手が大きな課題。熱心なオーナーは、スペアパーツをガレージへ一式揃えている。後期型の方が、車内は広く乗り心地に優れ、日常との親和性は高い。

グランドツアラー的な余裕ある走りと、素晴らしいサウンドで、ステアリングホイールを握れば多くの人が満たされるはず。手のひらへ伝わる感触は、だいぶ希薄でも。

オーナーの意見を聞いてみる

救急救命士だったジェレミー・ヤング氏は、セカンドキャリアとしてクラシックカーのレストアを手掛けている。「兄が突然亡くなり、テスラを遺してくれました。そのお金でボクスター GTSを入手したのですが、故障が多くプラス8を選んだんです」

「信頼性は、プラス8の方が遥かに高いです。走行距離は11万kmを超えたところ。クライスラー・インフェルノ・レッドに塗られたプラス8は、これ1台だけのようです」

モーガン・エアロ8(2000〜2019年/英国仕様)
モーガン・エアロ8(2000〜2019年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

「センターコンソールにある、タイヤのエア圧モニターは故障。リアのスクリーンは、ソフトトップを新調した職人の紹介で、5枚入手しました。1枚はスペアで保管してあります。ダッシュボードの傷を磨いたら、模様が消えちゃったんですよね」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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