ボルボはEVで乗るべきクルマ?EX30に乗って考えた踊り場の話(後編)【日本版編集長コラム#57】

公開 : 2025.11.24 12:05

いいデザインのクルマに乗っている

さてEX30に1週間乗っていて感じたのが、手元にあることの嬉しさ。『いいデザインのクルマに乗っている』という意識を持つことができ、自然とクルマを大事にしたい、スマートに乗りたいという気持ちになった。

ボディカラーがクリスタルホワイトプレミアムメタリックと呼ばれる白であることも関係しているのだろう。エクステリアはスッキリとしてクリーンな印象。コンパクトなサイズは、1~2名での生活にジャストフィットする印象で、荷室の狭さが若干気になるものの、そこは割り切れるはずだ。

『いいデザインのクルマに乗っている』という意識を持つことができた。
『いいデザインのクルマに乗っている』という意識を持つことができた。    平井大介

走りは軽快で、追い越し加速も充分。タイヤが19から18インチにサイズダウンしている乗り心地の変化はそれほど感じなかったが、見た目はむしろ18インチのほうがバランスよく感じる。

回生ブレーキはちょうどいい効きで、その強さを変更できるのもいい。ワンペダルドライブもボタンひとつでオンオフができる。ただ、これらを含めて多くの操作がセンターディスプレイに集中していて、1回設定を決めてしまえばいいのかもしれないが、頻繁に変更する人は不便に思うだろう。

また、集中力低下をアラーム音と共に表示する文字が一瞬の表示でしかも小さく、そのアラームが何を示しているのか理解するまで時間がかかった……という細かい話はあるものの、ディスプレイの視認性自体は高い。

ちなみに、シート座面前方張りが少し強いように感じた。どうやらモデルチェンジで座面長が伸びたらしく、その影響かもしれない。あくまで体格との相性かもしれないが、個人的には最後までベストポジションを発見できなかったことは付け加えておく。

全車グーグル搭載のアドバンテージ

EX30が全車グーグル搭載であることは、普段から使っているユーザーにとっては大きなアドバンテージだ。筆者はグーグルマップのヘビーユーザーなので、アカウントを同期して登録データを再現できた時は感動してしまった。

普段からアップル・カープレイを使用することが多いのだが、iPhoneのバッテリー消費が早く、充電しながら使用すると今度は本体の熱が……と不便さを感じていた。もはや全メーカーで搭載すべきと、ルート案内の怪しい標準装着ナビを見るたびに思うようになった。

EX30は全車グーグル搭載で、自分のアカウントと同期することができる。
EX30は全車グーグル搭載で、自分のアカウントと同期することができる。    平井大介

また、車内にキーがあるだけでアクセサリーがオンになり、スタート/ストップボタンが存在しないことにも、先進性を感じた。これに慣れると、他のEVでボタンが存在するだけで旧い世代に見えてしまうほどだ。

BEVを自然な形で『自動車』と融合

ボルボは早い段階から電動化に取り組んできたからこそ、もはやBEVを特別なものとして扱わず、EX30に乗っていると自然な形で『自動車』と融合させているように思えてくる。スカンジナビア・デザインのシンプルさも、その自然さを後押ししているのだろう。

また、エンジンに関しても2L直列4気筒以上を作らないとこれまた早い段階に宣言しており、だんだんとエンジンの存在を薄めてきた。つまり彼らが目指す方向性はエンジン車よりもクリーンで静かなBEVのほうが合致しており、極論すれば、ボルボにエンジンはいらないとさえ言える。

EX30に乗っていると自然な形で『自動車』と融合させているように思えてくる。
EX30に乗っていると自然な形で『自動車』と融合させているように思えてくる。    平井大介

今回の試乗で外気導入にしていて、前のクルマの排ガスが臭いと感じた時、それが答えだと思った。排ガスを日々出していることを自覚すべきだと。そういった自然に対する意識を持つようになったのは、まさにボルボに乗っているからであり、言ってみればこれはスウェーデンという国の凄さであり、面白さだ。

決してクルマとしての押しは強くないけど、主張がしっかりしている他にはない選択肢。ボルボEX30を通じて感じたのはそういった確かな個性と、売れる売れないではなく、この道は正しいと信じて進む意志の強さだ。

見た目はスタイリッシュになっても、こういった頑固さは、昔と変わらないボルボらしさだと言えよう。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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