ボルボはEVで乗るべきクルマ?EX30に乗って考えた踊り場の話(前編)【日本版編集長コラム#56】

公開 : 2025.11.16 12:05

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、『日本版編集長コラム』です。最近乗ったクルマの話、取材を通じて思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第56回は『ボルボEX30』話、その前編です。

答えはいろいろな形があっていい

電気自動車=BEVが苦戦している。正確には『そういう空気感になっている』と書いたほうが、筆者の抱いている感覚に近い。電動化まっしぐらで進んだものの、その速度に需要が追い付かず、各ブランドが踏み込んだアクセルペダルを少し戻している状況に見える。いわゆる『電動化の踊り場』だ。

個人的な意見としては、カーボンニュートラルの答えはBEV一択ではなく、いろいろな形があっていいと思っている。水素やバイオ燃料はもちろんのこと、マツダがジャパンモビリティショー2025で提案した二酸化炭素を回収する装置など、その未来はマルチソリューションで語られるべきだ。

今回の取材車『ボルボEX30ウルトラ・ツインモーター・パフォーマンス』。
今回の取材車『ボルボEX30ウルトラ・ツインモーター・パフォーマンス』。    平井大介

そしてその中で、このままBEV方向へ突き進んでもいいのではないか? というブランドがいくつかある。今回のテーマ、『ボルボ』もそのうちのひとつだ。一番コンパクトなBEV、『EX30』をいろいろと取材させて頂く中で、だんだんとそう思うようになった。

先に前提の話を書いておくと、ボルボも同じく踊り場の状況だ。XC90XC60にビッグマイチェンを施したのがその具体例で、マイルドハイブリッドモデルを強化することで、市場のニーズに対応している。特にXC60は未だにブランド内のベストセラーカーだ。

参考までに今年1~10月のグローバル販売台数は以下のとおりで、単純に台数だけ見ると、フルEVの落ち込みがかなり大きい。

フルEV:11万9087台(前年同時期14万6991台/マイナス19%)
プラグインハイブリッド:13万7685台(同13万9653台/マイナス1%)
マイルドハイブリッド/エンジン車:31万7977台(同33万5964台/マイナス5%)
合計:57万4749台(同62万2608台/マイナス8%)

UK編集部がレポートしているとおり、ボルボはコスト削減と利益率向上のため吉利グループ内でのハードウェア共用を拡大していくとしている。また、来年1月には本命ともいえるEX60のデビューが控えており、マイルドハイブリッド/エンジン車との共存で当面をしのいでいく想定だ。

販売好調を受けて5モデルへと拡大

今回取材したEX30は全長4235mm、全幅1835mm、全高1550mmと、特に狭い道の多い地域で強みを発揮するコンパクトなサイズがウリだ。最初に日本導入された時は1モデルだったが、販売好調を受けて、8月に以下の5モデルへと拡大している。

1:EX30プラス・シングルモーター/航続距離390km/価格479万円
2:EX30プラス・シングルモーター・エクステンデッドレンジ/560km/539万円
3:EX30ウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジ/560km/579万円
4:EX30ウルトラ・ツインモーター・パフォーマンス/535km/629万円
5:EX30クロスカントリー・ウルトラ・ツインモーター・パフォーマンス/500km/649万円

クロスカントリーとこちらは、前後に搭載するツインモーターモデルとなる。
クロスカントリーとこちらは、前後に搭載するツインモーターモデルとなる。    平井大介

このうち1のみがLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリー搭載モデルで、航続距離は短いものの500万円切りとなる価格がポイントで、4と5は前後にモーターを搭載するAWDのハイパフォーマンスモデルとなる。

ちなみにツインモーターのスペックはフロントが最大出力115kW(156ps)/最大トルク200Nm、リアが最大出力200kW(272ps)/最大トルク343Nmとなり、まさにスポーツカー級。ただし見た目はシングルモーターとほとんど変わらないので、言ってみれば『裏ボルボ』みたいな存在だ。

9月中旬の取材時なので少し前のデータだが、クロスカントリーは順調な出足で、他グレードは、1:20%弱、2:10%弱、3:54%、4:20%弱という販売比率になっている。裏ボルボと書いたが、スペックよりはAWDであることのほうが需要に繋がっているそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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