新型イプシロンもちゃんとランチアであった話【日本版編集長コラム#59】

公開 : 2025.12.07 12:25

デザインはランチアの面目躍如

インテリアではオールブルーの色使いが絶妙で、こういったコンパクトカーでも高級感を覚えさえるセンスのよさは、まさにランチアの面目躍如。センターコンソールにある『タヴォラ』と呼ばれるテーブルも、デザイン性と利便性を両立していて好印象だ。

ただ、『サーラ(SALA)』と呼ばれる総合制御機能は最後までよくわからなかった。これはS=サウンド、A=エア、L=ライトをA=オーグメンテーション、つまり『拡大』させる仮想インターフェイスらしく、確かにモードによってディスプレイなどの室内色は変わるのだが……。

圧倒的なデザイン力で正面突破してきた印象の新型ランチア・イプシロン。
圧倒的なデザイン力で正面突破してきた印象の新型ランチア・イプシロン。    平井大介

しかし、SALAのよくわかないところだったり、デザインを優先した結果なのかシートの隙間に汚れが溜まりそうだったり、細かく挙げていけば気になるところもあるが(個人的にはEVモードやオートホールドがあればベター)、逆にどれもイタリアらしいなぁと愛らしく感じるのは、筆者がイタリア車好きだからだろう。

ランチアは長年、何かをベースにして高級車に仕立てあげることを得意としてきた。今回のイプシロンもまさにそうで、プジョー208などと多くの部分を共有しながら、圧倒的なデザイン力で正面突破してきた印象だ。とにかくデザインがよすぎる!

デビュー当初、写真で見た前後ヘッドライトは違和感も覚えていたが、1日、1日、付き合う時間が長くなればなるほどじわじわとよく見えてきて、今や必要不可欠の個性だと確信できるようになった。

というわけで結論は、『現代のイプシロンもちゃんとランチアであった』というものだ。現場の開発スタッフは入れ替わっているはずなのに、伝統を踏まえてしっかりランチアらしいクルマ作りができているのは、実にイタリア、いやヨーロッパらしいと思うのであった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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