アルファ・ロメオ・ジュニアとフィアット600、究極の選択【日本版編集長コラム#61】
公開 : 2025.12.21 12:45
極端なカーブを描くフロントエンドのライン
さて、先に乗ったのはジュニアだった。名称がミラノの創造的エリアに由来するという『トルトーナ・ブラック』のボディカラーは精悍で、背が高いSUV的な雰囲気もありつつ、極端なカーブを描くフロントエンドのラインが大胆だ。
その下にはアルファ・ロメオではお馴染み、『スクデット』と呼ばれる盾形グリルが備わる。取材車のプレミアムに装着されるのは、伝統的なロゴを配した『レジェンダ』グリルだ。

以前読んだ資料によれば、『イル・モストロ=怪物』と例えられた『ES30型アルファ・ロメオSZ』にルーツを持つデザインが各部にあるという。ES30は個人的に大好きなので何度も記事化してきたが、新車当時はザガートによるデザインが独特すぎて異端児扱いされていたので、こうして表舞台に出てくるのは非常に嬉しく感じている。
歴代アルファ・ロメオのデザインは、必ずしも第一印象がいいクルマばかりではない。しかし、日々付き合っていくうちにじわじわと好きになり始めて、気がつくと惚れ込んでしまう……ということが多いように思う。
ジュニアもその伝統は守っていて、試乗初日よりも返却日のほうが、確実にこのクルマを好きになっていた。
結局はニヤリとしてしまう
「ズルいなぁ」と思わず呟いたのは、『カノッキアーレ=双眼鏡』と呼ばれる2連メーターを模したクラスターや、エアコンの吹き出し口にある『ビショーネ=蛇』だ。アルファ・ロメオやイタリア車が好きであれば、「ハイブリッドのアルファなんて……」とブツブツ言いながら、コクピットでこれらを見て、結局はニヤリとしてしまうだろう。
パワートレインに採用される1.2L直3ターボのマイルドハイブリッドは、結論から書くと名機になりそうな予感がしている。街中が中心となった今回の試乗コースで言えばとにかく中間加速が気持ちよく、回生ブレーキの効きもちょうどいい。ワインディングを走る機会はなかったが、テンポよく走る姿が目に浮かんだ。

確かにブッソV6やツインスパークほどの存在感はないかもしれないが、そういった個性を求めるのは、現代では難しいだろう。しかしそんな中でも、ジュニアの走りがイタリア車らしい気持ちよさをちゃんと持っていることは強調しておきたい。
フィアットを代表するベストセラーモデル
続いてはフィアット600。フィアットのクラシックモデルといえば、チンクエチェント(ヌォーヴァ500)が一番メジャーだが、1955年に登場したフィアット600(セイチェント)もまた、約267万台が生産されたフィアットを代表するベストセラーモデルだ。
そのクオリティは高く、だからこそアバルト版にも多くの名車があり……という話は長くなるのでさて置き、往年の雰囲気を再現した現代の600は、ひと目でフィアットとわかる実に愛らしいスタイリングだ。スカイブルーのボディカラーもよく似合っている。

室内に乗り込めば、アイボリーとスカイブルーステッチを組み合わせたシートが秀逸。長距離の乗り心地もよかった。また、往年のモデルを思い出させるダッシュボードなど全てがイタリアンデザインの面目躍如で、感動的ですらある。
一般的な機械式駐車場に入らない全高こそ惜しいが、街中でのサイズ感は絶妙。パワーも充分で実によく走る印象だ。足回りは少し硬いが、かつて乗っていたフィアット・バルケッタもこんなだったなぁと、フィアットらしさを感じさせる。
毎日乗っていると実用性がとても高く、クラストップレベルとなる23.2km/Lの低燃費も含めて、万能という言葉が頭に浮かんできた。「こういうイタリア車を待ってました!」という方も多いのではないだろうか。


















































































