75年前の月並みサルーン(1) スタンダード・ヴァンガードとオースチンA70ヘレフォード 記憶を呼び起こすタイムマシン

公開 : 2026.02.14 17:45

プリマスに影響を受けたアメリカンなボディ

ヴァンガードの4気筒エンジンは、2088cc。トライアンフのTRシリーズや、ファーガソン社のトラクターにも選ばれたユニットで、耐久性には定評があった。トランスミッションは、3速マニュアルのコラム。2速と3速には、オーバードライブも備わった。

アメリカンな見た目は、狙ったもの。デザイナーのウォルター・ベルグローブ氏は、ロンドンのアメリカ大使館前に停まっていた、1941年式プリマスを事前に視察していた。

スタンダード・ヴァンガード・フェイズA1(1948~1952年/英国仕様)
スタンダード・ヴァンガード・フェイズA1(1948~1952年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ボディの生産を請け負ったのは、コーチビルダーのフィッシャー&ラドロー社。1952年にフェイズA1仕様へアップデートされ、ボンネットが低くなり、フロントグリルが広げられ、リアガラスが拡大している。

ホイールベースの短さが、ベルグローブは不満だったという。ボディは後端で突然収束し、ルーフラインは丸い。真横から見ると、カムテールを生み出したドイツ人技術者、ヴニバルト・カム博士の試作に見えなくもない。

イメージ刷新は難しかったA70ヘレフォード

他方、オースチンはA70ヘレフォード・サルーンを4万8640台しか生産していない。スタンダードは、単一モデルを1日に500台ラインオフしていたのに対し、A30からA135 プリンセスまで、多様なモデルを展開していたことが影響している。

それでも、ヴァンガードの好調は上層部を苛立たせた。ヘレフォード以前の1948年に、オースチンはA70ハンプシャーを発売。1945年のサルーン、16HP由来の2199ccエンジンを積み、A40由来のシャシーに狭いボディが載せられ、支持を集められずにいた。

オースチンA70ヘレフォード(1950~1954年/英国仕様)
オースチンA70ヘレフォード(1950~1954年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

1950年に、改良版のA70ヘレフォードが登場。ところが、デザイナーのディック・ブルジ氏によるスタイリングは、ひと回り小さいA40シリーズと酷似していた。ホイールベースが165mm伸び、後席が拡大されても、イメージの刷新は難しかった。

この続きは、75年前の月並みサルーン(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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