名機Aシリーズを初搭載 オースチンA30/A35 英国版クラシック・ガイド 理想的な小型乗用車 前編

公開 : 2023.08.05 07:05

かつて彼の地の国民車といえた、A30「ニュー・セブン」。近年、注目度が上昇中だというクラシックを英編集部がご紹介します。

1950年代初頭の理想的なファミリーカー

1950年代初頭の英国へぴったりハマっていた、オースチンA30「ニュー・オースチン・セブン」。当時の若い世代にとって、理想的なファミリーカーになった。

第二次大戦は集結したものの、経済はひっ迫していた。20.0km/L近い燃費を現実的に得られる、しっかり作り込まれた手頃な価格の小型乗用車は、まさに市民が求めていたものだった。

オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)
オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)

その頃のオースチンは、工業デザインの父と呼ばれるレイモンド・ローウィ氏が営む事務所へ、ボディのデザインで協力を仰いでいた。そこで、在籍していたデザイナーのホールデン・コート氏が、新型サルーンのスタイリングを提案した。

原案にはオースチン側で手が加えられ、先代のオースチン・セブンへ近いサイズへ縮小。丸く小さな愛らしいボディが生まれた。英国人デザイナーのデビッド・ベイチュ氏も、1953年式以降のダッシュボードを含む、マイナーチェンジへ関わっている。

A30はモノコック構造で、新開発のオーバーヘッドバルブ4気筒エンジン、名機として知られるAシリーズ・ユニットを量産車として初搭載。2速以上にシンクロメッシュを内蔵した、4速MTが組まれた。

このAシリーズと呼ばれるエンジンは、それ以来、半世紀に渡って様々なモデルの動力源となった。BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)の、牽引役になったといってもいい。

電気系統には、先進的な12Vの電圧を採用。リア・サスペンションにアンチロールバーを装備し、驚くほど優れた操縦性も叶えていた。

1959年にモーリス・ミニへ役目を交代

1951年に発売された、初期型となるA30の排気量は803cc。設計に優れたエンジンでも、さすがに身軽な走りは実現できていなかった。

緩やかな登り坂では、3速に入れて約50km/hで走るのが精一杯。とはいえ、当時の手頃なファミリーカーとしては不満のない性能ではあった。

オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)
オースチンA30/A35(1951〜1968年/英国仕様)

1952年11月のモーター誌は、次のように紹介している。「加速力や走行速度は、これまでの国民の大部分が必要とするものより優れています」

1956年には、後期型のA35へマイナーチェンジ。排気量は948ccへ増やされ、馬力も向上し、歴代のAシリーズ・ユニットのなかでも高い評価を得ている。

その後、モーリス・ミニ・マイナーが1959年に登場。A35の役目は、新しい前輪駆動のハッチバックへバトンタッチした。

それでも、ステーションワゴンのカントリーマンは、1962年まで生産が続いている。5cwtと呼ばれる商用バンは、1968年まで存続された。排気量を848ccから1098ccへ拡大しながら。

オースチンA30シリーズで最も珍しいのが、5cwtピックアップ。1956年から1957年という短い期間に作られた小型トラックで、生産数は475台に留まる。また、2ドアサルーンも追加されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

名機Aシリーズを初搭載 オースチンA30/A35 英国版クラシック・ガイド 理想的な小型乗用車の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

オースチンの人気画像