『ディフェンダー』はいかにしてダカールを制したか(前編) 市販車クラス初参戦 栄光を掴んだ軌跡

公開 : 2026.01.28 17:05

市販車で挑むことの意義

その理由について、キャメロン氏はこう説明する。「T1+クラスには興味がありませんでした。市販車とラリーカーの共通点を示したかったからです。それが参戦理由です。最も頑丈で、最も凶暴で、最も高性能の市販車であるディフェンダー・オクタを基に、それと繋がりを感じさせるマシンを作りたかった」。

問題はあった。市販車クラス『T2』の規定が、キャメロン氏の言葉を借りれば「目的に合致していなかった」のだ。規定は20年間更新されておらず、現代の市販車を反映したものではないため、関心は薄かった。

W2RCストッククラスにワークス参戦した『ディフェンダー・ダカールD7X-R』
W2RCストッククラスにワークス参戦した『ディフェンダー・ダカールD7X-R』

ダカール・ラリー主催者はJLR、トヨタフォードなど各メーカーと協力し、新規定を策定。新たなストッククラスを創設した。このクラスでは、基本構造を保持した市販車ベースの車両の参戦が認められる。一定のパワーウェイトレシオによる性能制限が課され、サウジアラビアの過酷な地形を走破できる範囲での限定的な改造が許可される。

過去数年間T2クラスを支配してきたトヨタ・ハイラックスのピックアップトラックはボディオンフレーム構造を採用しているが、ディフェンダーはアルミ製モノコックボディだ。キャメロン氏は、モノコック構造の四輪駆動車が従来のラダーフレーム車と同様に過酷なオフロード走行をこなせることを証明できる点が、このクラスの大きな魅力だったと認めている。

ストックレーサーの製作

ディフェンダー・ダカールD7X-Rは、正真正銘のストックマシンだ。ボディシェルは、スロバキアのニトラにある市販車の生産ラインから調達した。

「この車両に使われているプレス加工品など、すべてがデファイダー110を購入した場合とまったく同じものです」と、プロジェクトの技術統合責任者であるジャック・ランバート氏は語る。同氏は基本的に、JLRと車両の製作・運営を担当するプロドライブ社とのパイプ役を務めている。

W2RCストッククラスにワークス参戦した『ディフェンダー・ダカールD7X-R』
W2RCストッククラスにワークス参戦した『ディフェンダー・ダカールD7X-R』

「ニトラ工場のチームとは非常に緊密に連携しました。規定上、ダカールに向けてボディに小規模な改造を加えることが認められていますが、接着剤が硬化して接合した後の改造は非常に困難です。工場のチームは週末に、部品を誤って取り込まないよう特定のロボットを停止させたうえで、これらのボディを特別に組み立てます。つまり、すべて市販車基準で生産された、ラリー仕様のボディなのです」

ボディはその後、英国バンベリーにあるプロドライブの拠点へ輸送され、そこで手作業でラリーカーへ組み立てられる。ただし、ほぼ手つかずのまま残されている要素が1つある。パワートレインだ。

ベース車両はディフェンダー・オクタで、4.4LツインターボV8エンジンと8速ATを搭載する。しかし、出力規制のため、D7X-Rにはリストリクターが装着され、出力はオクタの635psに対し395psに制限されている。オフロードでの低速走行を考慮し、トランスミッションのファイナルギア比も下げられた。

(翻訳者注:この記事は「後編」へ続きます。)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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