「人生最後のリニューアルオープン!」 ときわ台駅前の老舗ホビーストアの話【長尾循の古今東西モデルカーよもやま話:第19回】

公開 : 2026.05.27 12:05

モータースポーツに傾注

以前から模型を通じて海外のモータースポーツにも興味を持っていた藤田さんは1990年、休みをとってF1モナコ・グランプリの観戦ツアーに参加。この体験をきっかけにさらにモータースポーツに傾注するようになり、1995年にはモナコGPと双璧をなすクラシックイベントであるル・マン24時間レースの見学にも訪れました。

ちなみにこの年のル・マンはJ.J.レート、ヤニック・ダルマス、関谷正徳が駆るマクラーレンF1 GTRが優勝した年として記憶に残っています。

藤田さんは、ル・マンの現地新聞でも紹介されるほどです。
藤田さんは、ル・マンの現地新聞でも紹介されるほどです。    長尾循

日本人ドライバー初のル・マン優勝と同時に、ル・マン史上最も雨量が多かったレースとも言われ、藤田さんも観戦中は難儀したこと。そんな強烈な印象も手伝ってか、この初めてのル・マン観戦ですっかりその魅力にハマった藤田さん。その後はほぼ毎年のようにル・マン詣でを繰り返すこととなります。

もちろん模型店のマスターである藤田さんであるからして、単なる物見遊山では終わりません。

持ち前の人懐っこさで、現地の模型メーカーや出版社、レースカメラマン、ACOのスタッフなどと次々に仲良くなり、それらの人脈を活かし、国内では手に入りにくいモデルやル・マン関連のグッズを仕入れては、それらをフジヤの店頭で取り扱うようになっていったのです。

『ル・マンのフジヤ』という通り名

個人商店の店主の趣味というものは、そのショップに強烈な個性をもたらします。

類は友を呼ぶとはよく言ったもので、やがてル・マンやF1をはじめとするモータースポーツ系模型ファンの間でフジヤの名前は徐々に広がり、いつしか『ル・マンのフジヤ』という通り名で呼ばれるようになっていきました。

藤田宏さんの工作机。
藤田宏さんの工作机。    長尾循

常連のお客さんたちが集まる懇親会を母体に、模型サークル『フジヤ・ルマンの会』(現在は『43モデラーズクラブ・ルマンの会』に改称)が生まれたり、通常の模型やグッズだけではなく、プロモデラー高橋明彦氏をはじめとする何人かの『フジヤ専属モデラー』が手がけたワンオフの作品を入手できたりといった点は、大手量販店やネットショップには決して真似のできない、老舗スペシャルショップならではの強みでありましょう。

現在は息子さんが舵取り

そんなフジヤが今年の5月、リニューアルを行いました。現在フジヤ全体の舵取りを担当しているのは藤田宏さんの息子、和央(かずお)さん。

変化する時代に合わせ現在は再び男玩と女玩、カードゲーム、ミニ四駆などの売り場が大きくなり、藤田宏さんが担当するのは、1階の奥に設けられたマニアックな、でも決して排他的ではない穏やかな模型コーナーです。

「これが僕の人生最後のリニューアルオープン! お店全体の仕切りは息子夫婦に任せたから、自分のエリアでは好きなことをやっていきます」と、老いてなお(失礼)意気軒高なフジヤの名物マスターに幸多かれ!

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    長尾循

    Jun Nagao

    1962年生まれ。企画室ネコ時代を知る最後の世代としてモデル・カーズとカー・マガジンの編集に携わったのち定年退職。子供の頃からの夢「クルマと模型で遊んで暮らす人生」を目指し(既に実践中か?)今なおフリーランスとして仕事に追われる日々。1985年に買ったスーパーセブンにいまだに乗り続けている進歩のない人。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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