メルセデス・ベンツCEOが語る、クルマ好きもEVを気に入る理由(前編) デジタル化と伝統の難しいバランス取り

公開 : 2026.09.03 17:05

事業を支えるアーキテクチャー戦略

「鍵となるのは、綿密に練られたアーキテクチャー戦略です」とケレニウス氏は言う。

「もし、すべてのナットやボルトが新しいものだったら、到底実現できなかったでしょう。しかし、モジュール戦略とオペレーティングシステム・プラットフォーム戦略、つまりクルマの『脳』と『中枢神経系』さえあれば、毎回根本から新しく開発する必要はないのです」

新型Cクラス・エレクトリック
新型Cクラス・エレクトリック

したがって、筆者が乗せてもらったCクラス・エレクトリックに搭載されているMB.OSオペレーティングシステムは、新型GLCや『CLA』のEVだけでなく、新型『Sクラス』(内燃機関車)や今後発売予定のCクラス(内燃機関車)にも採用されている。ケレニウス氏が指摘するように、「ソフトウェア定義型車両(SDV)」となるのは新世代EVだけではないのだ。

スウェーデン人のケレニウス氏は2019年、評価の高かったディーター・ツェッチェ氏の後任として、メルセデス・ベンツの会長兼CEOに就任した。1993年から同社に勤務していた彼は、社内からの選出という形ではあったが、ドイツ人以外が初めてメルセデスを率いるという点では注目すべき人選だった(妻はドイツ人であり、現在は二重国籍を持っている)。

メルセデスの中心にあるのは技術

自動車業界のCEOは通常、経営畑か技術畑のいずれかのバックグラウンドを持つが、ケレニウス氏は33年にわたるキャリアの中であらゆる分野を経験してきた。

「わたしは経営部門の研修生としてキャリアをスタートさせ、その後、技術部門へと転身したんです」と彼は笑いながら語る。当初は部品調達を担う部署で働き、「調達や供給部で働くと、エンジニアたちの『相棒』のような存在になります」。やがて2003年、SLRマクラーレンが開発されていた時期に、マクラーレンのオペレーション担当エグゼクティブ・ディレクターに就任した。

メルセデス・ベンツSLRマクラーレン
メルセデス・ベンツSLRマクラーレン

その後、英国ブリックスワースにあるメルセデスのF1エンジン部門や米国子会社の経営を歴任し、2010年にドイツに戻ってメルセデスAMGのトップに就いた。2015年に取締役会に加わり、営業部門、続いて技術部門を率いた後、CEOに就任した。

「生産、管理、営業を経て、最終的には会社全体のエンジニアリング・ディレクターになりました。ですが、根本的には、自動車会社に勤めている以上、何をしていようとも、その中心には製品と技術があるのだと考えています。製品の動向を常に把握しようとする好奇心を持たなければなりません。技術はメルセデスの戦略の中心にあります」

(翻訳者注釈:この記事は「後編」へ続きます)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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