ボルボS60 T3 SE

公開 : 2016.03.10 23:55  更新 : 2017.05.29 19:08

ショート・ストロークとバランスシャフトの廃止はプレミアム性とか高性能だけを基準にすればグレード・ダウンの感は否めないが、実際にS60 T3 SEを乗った印象はT4とは一味違った魅力を持った新しいS60だった。

T4時代と比べると軽く回るのである。大きな重量変化はないはずなのに、あたかも車重が軽くなったように思えてしまう。理由の一つは加速反応のよさ。低負荷域でも踏み込みから即加速する。浅いペダル・ストロークでも加減速応答がしっかりしているので、「ペダルについてくる」感覚がある。1.5ℓからターボで大トルクを引き出している無理矢理感はほとんど感じられない。

なお、一般走行における常用回転数は1500〜2000rpm強だが、エコ+(プラス)モード選択時は1500rpm以下においても緩加速くらいならダウンシフトなしで賄う力強さ。ちなみに同モードではコースティング機能も作動し、エンブレでも減速しすぎるような低負荷走行での速度コントロール性にも優れていた。これは省燃費性能のポイントのひとつだ。

軽快感のもうひとつ要点は中庸域から高回転までの重量感の少ないエンジン・フィール。この辺りは車格感との裏返しでもあるのだが、回転に載せた加速感が心地よく、若々しさやカジュアルな感覚にも繋がっている。

SE系が装着する215/50R17と日常域の乗り心地も気遣ったサスチューンとの相性も良好だ。ボルボに共通した特徴として高速ツーリングを軸脚とした据わりのよい操縦特性が挙げられる。以前のボルボ車に比べると高減衰感は控え目になり、ストロークで往なす感覚が強くなっているが、それでも揺れ返しの少ない収まりのよさで落ち着いたハンドリングを示す。路面パッチ等の小段差の当たりも比較的穏やか。タイヤの縦バネを上手に使っている。アウトバーン・ツアラー的なスポーティ系R-デザインに比べると性能面のプレミアム感は希薄だが、タウンユースから高速長距離まで得手不得手のなく頼もしい走りを示すのが妙味である。

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