ポルシェ・ケイマンS

公開 : 2013.02.11 11:17  更新 : 2017.05.29 19:07

■どんなクルマ?

340万円。第2世代のポルシェケイマンをドライブする際には、頭のなかに叩きこんで置かなければならない数値だ。それは、ケイマンSと、同じ3.4ℓの排気量を持つフラット6を搭載する最新の911カレラとの価格差なのだ。

この新しいケイマンSの価格設定は実にアグレッシブだ。ベース価格は48,783ポンド(715万円)。これは、48,120ポンド(705万円)のアウディTT RSクアトロとほぼ同じ価格だ。しかし、本当に比較しなければならないのは、77,449ポンド(1,135万円)の911カレラであろう。

エンジンから話題を離れよう。まずはそのスタイリングだ。実に綺麗なフォルムだ。その兄弟車であるボクスター同様、滑らかなプロフィールだけでなく、ピンとはった表面とパリっとしたラインが特徴だ。ホイールハウスは大型化され、標準の19インチ・ホイールの他、20インチ・ホイールもオプションで装着可能となった。

ボディ・サイズは、4380mm×1801mm×1295mmで、前モデルよりも35mm長く、1mm幅広く、10mm低くなった。トレッドは、フロントが40mm広くなった1526mm、リアが18mm広くなった1540mm、ホイールベースは30mm長い2475mmという値だ。

ボディの素材は、主にアルミニウム製で、一部にはマグネシウムも使われている。ボディの本体は25kg軽くなったが、装備などにより全体的な重量は僅かながら重くなっている。

■どんな感じ?

ほとんどの自動車メーカーは、ポルシェほどエルゴノミクスを理解していないようだ。ケイマンのドライビング・ポジションは、あらゆる批評を跳ね返すだけの良さがある。特に、ステアリング・ホイールとシートの位置関係は素晴らしい。また、ショルダー・ルームが大きくなったのも嬉しい。

視界は、キャブ・フォワード・デザインと、大きなリア・クウォーター・ウィンドーによって良好だ。

インテリアも旧モデルよりも豊かで、ビジュアル的にも優れている。もちろん、それはボクスターから持ち越されたものだが、このケイマンに移植するにあたってもデザインの崩れなどはない。

2シーターではあるが、その分、ブートスペースは確保されているようで、フロントの150ℓのコンパートメントや、シートの後ろの162ℓのスペースなど、充分なサイズがある。

また、エルゴノミクスは別としても、そのクオリティも素晴らしいものがある。唯一不満を言うとすれば、ダッシュボートの外側にレイアウトされた電気的なハンドブレーキだろうか。

ケイマンSに搭載されるエンジンは、3.4ℓのフラット6だ。そのパワーは、旧モデルよりも5bhp多くなった320bhpを7400rpmで発生。トルクも0.7kg-m太くなった37.3kg-mを5800rpmで発生する。これは前モデルよりも1300rpm高くなっている。そのパワーについては、911カレラのエリアを侵食しないように故意に抑えられているのかもしれない。しかし1350kgのボディ・ウエイトのおかげで、パワー・ウエイト・レシオは237bhp/トンという値を得る。

エンジンは、スポーツ・モードが標準だ。このモード切り替えは、センター・コンソールのスイッチで替えることができ、電子制御をリマッピングすることでスロットル・レスポンスを変更するというものだ。このオプションのデュアル・クラッチとスポーツ・クロノ・パッケージは、金銭的に余裕があれば、是非とも欲しい装備だ。

われわれのテスト車両は、7速のデュアル・クラッチが装着されていたが、標準は6速マニュアルだ。この他、オプションとしては、スポーツ・クロノ・パッケージがある。これは、ダイナミック・エンジン・マウントによってニュートラルなハンドリングをもたらすものだ。更に、スポーツ・エグゾーストは、心地良いサウンドをもたらすオプションとして用意される。

レスポンス、フレキシビリティ、そしてスムーズさはエンジンの主なアピールポイントだ。確かに、低回転域では、それらの要素が充分に満たされているエンジンである。しかし、本当に魅力的なのは、ミッドレンジから上の回転域だ。それは素晴らしい以外の何物でもない。新しく修正を加えられたフラット6は、より高回転を使うように要求してくるのだ。

そのパフォーマンスは0-100km/hが4.7秒、0-200km/hが16.9秒で、トップ・スピードは282km/hに達する。7600rpmのレブ・リミットまでかっちり回してやれば、疑いもなくその数値が得られる。

シャシーも、より直進安定性が増し、より穏やかなステアリング・フィールになった感じだ。さすがに240km/hを越えると、フロントがリフトしてくるが、それでも不安というレベルのものではない。

ケイマンSは、このクラスは、確実にこのクラスでも最速のモデルだ。それでいて、乗り心地も良い。日常のドライブではリラックスできるユーザビリティを持っている。

ちなみに、ケイマンSのCO2排出量は前モデルの221g/kmから188g/kmに向上し、燃費も1.6ℓ/kmあがった12.5km/ℓとなっている。

6車線のアウトバーンを降り、われわれはシュツットガルトのワインディング・ロードに向かった。まず、最初に思ったのは、旧ケイマンに対して若干大きくなったことを微塵も感じないことだ。

新しい電気機械制御ステアリングも、素晴らしくマッチングが良い。初期の油圧システムのステアリングは、フィードバックに欠けるものだったが、このステアリングは重さ、フィードバック、セルフ・センタリング、そしてダイレクト感すべてに優れる。ドイツのレギュレーションで、今回われわれのテスト車輛はフロントが235/40、リアが265/40という19インチのミシュラン・パイロット・スポーツA/Sというウィンター・タイヤを履いていた。しかし、その繊細さ、驚くべき機敏さは間違いなくこのクラスのベンチマークに違いないと理解できた。しかも、それは、われわれの予想を遥かに上回るものだった。

また、ドライな路面でのグリップも非常に高い。コーナーは実にニュートラルな感覚で、ロールも良く抑えられている。トルク・ベクタリング・システムも後輪の安定性を、駆動力を損なうことなく上げるのに役立っている。リアへ荷重がのったことを気にすることなく、スロットルを踏み込むことができるのだ。

ケイマンSは、驚くほど柔軟で、それでいて前モデルよりも高い限界性能を持っている。アクティブ・サスペンションもその一助となっているし、長いホイールベースもプラスになっている。

■「買い」か?

ケイマンSは、初対面でこれほどまでの高い評価を与えた珍しいクルマだ。有無を言わせぬルックス、シャープなハンドリング、高い快適性、上質になったインテリア、増した実用性など、前モデルよりもはっきりと進歩している。このクルマが911カレラよりも340万円も安く手に入るのだから、これ以上何を望もうか。

(グレッグ・ケーブル)

ポルシェ・ケイマンS

価格 48,783ポンド(715万円)
最高速度 282km/h
0-100km/h加速 4.7秒
燃費 12.5km/ℓ
CO2排出量 188g/km
乾燥重量 1350kg
エンジン 水平対向6気筒3436cc
最高出力 320bhp/7400rpm
最大トルク 37.3kg-m/5800rpm
ギアボックス 7速デュアル・クラッチ

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