マイクロカー「ピールP50」に試乗 独特の世界観、理由はどこに?

公開 : 2018.01.20 10:10  更新 : 2018.01.20 10:51


ピールP50の歴史をおさらい

このようなクラスを代表する車種、AUTOCARとしては見逃す手はない。ただ、試乗する前に、ちょっとこのクルマの歴史をおさらいしてみよう。

マン島の海岸線にある町、ピールで設立されたピール・エンジニアリング・カンパニーはグラスFRPのスペシャリストで、ボートや、ノートンやBMWに合わせてデザインされた二輪用フェアリングなどを製造していた。

創設者のシリル・キャネルは、60km/h強で走れるひとり乗り+荷物スペース程度のシティカーを造ろうと思い立ち、そうして開発された前1輪/後2輪のプロトタイプを、1962年のアールズコート・モーターショーで発表するが、このレイアウトはすぐに変更された。

市販モデルは翌63年に発売。エンジンはツヴァイラッド・ウニオン/DKWの2ストローク49ccで、3段MTを介して後輪を駆動する。モペッド並みのコストで自動車の快適性を得られるというコンセプトで、2年間に50台程度が生産された。現存するのは、その半数ほどだ。

好きが高じて復刻を実現

ピールの熱心なマニアであるゲーリー・ヒルマンは、オリジナルの価格があまりにも高騰していることに不満を覚えた。そこで製造にかかわる諸権利を手に入れ、新たに設立したピール・エンジニアの名のもとに、再生産を計画したのである。

現在、彼らは年間15台程度のP50と、10台程度の2座バブルカーであるトライデントを世に送り出している。英国ではガソリンエンジン仕様が一般的で、価格は1万4879ポンド(約223万円)。

しかし、最大のマーケットであるアメリカでは、排ガス規制に影響されないよう電動モデルを投入。こちらは1万3679ポンド(約205万円)だ。

顧客は世界中におり、彼らは低価格車ながらピールを大いに楽しんでいる。たとえばドバイの皇太子は、P50とトライデントを5台ずつ購入し、サングラスをかけた屈強なボディガードたちを従えてコンボイ走行を楽しんでいるらしい。想像すると笑えるが。

また、熱狂的なカーマニアとして知られるアブダビのレインボー・シャイフは、広大なペントハウスを案内するために電動のP50を用いているとか。

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