フォードF-150 英国試乗 高性能版「ラプター」の走りは

公開 : 2018.04.08 10:10  更新 : 2018.04.08 17:01

剛性感の足りない走り

では走りだしてみよう。運転席は車体の左側に思いきりかたよっている。ボディの反対側もはるかかなたまであるので、はじめはこわごわ運転することになる。ステアリングの反応もいい加減としかいいようがないので、車線からはみ出さないよう常に微調整しないといけない。中型クラスの対向車がやってきただけで、ぶつかりやしないかと思わずひるんで息をのんでしまう。

しかし、慣れてくればちょっとペースを上げられる。何といっても、本来はバハ1000レースのような過酷な砂漠レースのためのマシンだ。その証に運転モード設定にも、砂漠とチェッカーフラッグのアイコンで示されるその名も「バハ」というモードがあるのだ。

だから、頑丈なのは運転していてよくわかる。だが舗装の悪いところや穴ぼこを強行突破すると、キャビンは全体がわなわなと震え、リアサスペンションはギシギシと不平をわめき散らす。シャシーは岩のように頑強でびくともしないが、上に載るボディはどうも安定感に欠けるのだ。後ヒンジの後席ドアがつくためにBピラーがないのも、剛性感の不足につながっているのかもしれない。

こんどは運転モードを「スポーツ」に切りかえてみた。けれども、何が変わったのかよくわからない。ラプターのV6は台形のトルクカーブが特徴で、ごく低回転からも力強い加速をもたらすのだが、引っぱる車体があまりに重いので「圧倒的」とまでは感じられない。速いといえば速いのだが、たとえれば猛牛の突進のようなもので、驚きと恐怖は感じるものの絶対的に速いわけではないのだ。

10段のATはラプターの性格には合っており、仕事はきちんとこなす。ただ他のATとくらべると、変速動作は呼び鈴の音にのっそりと起きあがる酔っぱらいみたいに眠たい。

乗り心地は硬く、たえず揺すられる。そのかわり、ワインディングでコーナーに鋭く突っ込んでもムチャクチャなことにはならない。コントロール性もよく、田舎道でも持てあますことなく元気よく走らせることができる。とはいえ、このとんでもない車幅ではラインを選ぶ余地などないのだが。

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