シトロエンDS 4種乗り比べ 「60年前の未来のクルマ」後編

公開 : 2018.05.04 20:10  更新 : 2021.03.05 21:43

最良の選択はスラウ製のパラス

コーナリング中にボディの長さを感じさせず、テールが勝手な動きをするような不安もない。4速のトランスミッションも扱いやすく、タイミングよくスロットル操作することとノンシンクロの1速に入れるのは停車中だけにすることを心得ておけばよい。

結局のところDSは、完全な実用車であるためにギミックを排したクルマなのだ。サファリには数種類のタイプがあったが、今回の取材車は荷室に2つの折り畳みシートを装備。最大8人まで乗れるので、グループで日帰りの狩猟に出掛けるのにピッタリだ。ルーフラックも備えるし、快適なインテリアはきわめて機能的と表現できる。ダッシュボードには英国的伝統主義の名残を示すためにウォルナットが採用されているが、そのダッシュボードが同時代の英国の平均的な6気筒ステーションワゴンとの違いを際立たせているのは皮肉なことだ。


スラウで組み立てられた最後のモデルのひとつがDS21パラスである。1965年に導入された2175ccエンジンに、より豪華な装備を組み合わせた上級仕様。取材車のパラスを見ると、シビエ製クォーツハロゲンの補助灯やアルミのCピラー・パネルがDS19との違いを強調している。控え目だが、メッセージは明快だ。ふんだんなクロームやホワイトウォールのタイヤを友人に自慢したいなら、フォードのゾディアック・エグゼクティブMk IIIでも選べばよいのだ。

クラシックカーの愛好家はそれぞれ、DSシリーズのどれが究極のモデルかについて持論をお持ちだろう。私の場合、25年以上も前からそれはスラウ製のパラスだった。
 

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