シトロエンDS 4種乗り比べ 「60年前の未来のクルマ」後編

公開 : 2018.05.04 20:10  更新 : 2021.03.05 21:43

シトロエンDS 4種乗り比べの後編です。「最良はスラウ製のパラス」と言う筆者が、50年代の最も未来的なファミリーカーを見つめ直します。「4台は、どれも時代にマッチしなかった」 味わい深いインプレッションです。

もくじ

前編
同時代の英国車とは「まったく違う」
スタイリングは「新たなショック」
手で動かせるワイパー
シトロエン 隣にジャガー/ローバー
1964年型 DS19サファリ

後編
シトロエン乗りの儀式
最良の選択はスラウ製のパラス
マシュマロのような乗り心地
DS21デカポタブル登場
ありふれた風景が、優美な世界に
電気なし 水道なし 60年前の「未来」

シトロエン乗りの儀式

シトロエンをスタートさせるのは、けっして飽きることのない儀式だ。4.9mの長いボディが油圧ポンプの唸り音を伴奏にゆっくりと持ち上がる様子は、何度見ても印象的だ。独自の方法論を乗り手に焼き付けようとするクルマだから、それに慣れるには時間がかかる。このサファリのステアリングは、最初はフィーリングがないと思うほど軽いが、完璧なまでにダイレクトだ。

一方、大きなラバー製のペダルで操作するブレーキはとても敏感で、この大柄なワゴンを易々とストップさせる。

50〜60年前のDSが他のクルマとどれほど違っていたか?

数マイルも走れば、だんだんわかってくる。それはサファリが当時の英国で唯一の大型FFエステートだったから、というだけではない。この国の裕福なモータリストにとっては当たり前だったもの──例えば節度の乏しいコラムシフトも、ランバウトさえもチャレンジングになってしまう鈍重なハンドリングも、堅い乗り心地も、どれもDSに乗りさえすれば解放されるのだ。

ハンバーやヴォクゾール、フォードの大型車に乗り馴れた人にとって、DSの安定感は半信半疑の感情を残すものだったに違いない。それは今日の路上でも同じだ。試乗コースは軍用の重量級トラックで路面が痛めつけられていたが、サファリはまさに滑空するがごときの乗り味。
 

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