シトロエンDS 4種乗り比べ 「60年前の未来のクルマ」後編

公開 : 2018.05.04 20:10  更新 : 2021.03.05 21:43

ありふれた風景が、優美な世界に

デカポタブルがスラウ工場で生産されることはなかった。今回の取材車はシャプロンが50台だけ作った希少な右ハンドル仕様の1台であり、DS21のエンジンを搭載。これもロラン・バルトの「空から落ちてきた」の表現に相応しく、見る人を一瞬で魅了する。

ディテールの造り込みは、デザインし直されたリアターンランプやパラス仕様の内装まで、望み得るベストに近い。

ソフトトップを閉じれば、安楽で落ち着いた雰囲気。オープン状態のスタイルは率直に言って傑作だ。撮影のためにバッキンガムシャー州の工場跡地に立ち寄ると、ありふれた風景が優美で魅力的な世界に見えてきたし、通りすがりの人々は畏敬に打たれた表情でこのドロップヘッドのDSを見つめた。周囲を変えてしまうような力を生まれながらに備えたクルマは、世の中にそう多くない。

しかしデカポタブルはムービースターがカンヌ映画祭に乗り付けるのには、たぶん向かない。後席に乗って観衆の声援に応えるのは誇らしいことだろうが、後席のレッグルームが狭すぎるのだ。歌手で俳優のチャーリー・ドレイクぐらい小柄でないと、快適に過ごすのは難しい。
 

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