なぜコワイ顔のクルマが増えたのか 背景にグローバル化? 急増の意図

公開 : 2019.04.08 18:10  更新 : 2021.10.22 10:18

これまでデザインを統一しなかった事情

メルセデス・ベンツBMWは古くから統一されたフロントマスクを採用しているが、日本車は車種ごとに顔立ちが違っていた。

その理由は、もともと日本車はアメリカ車を手本に発展しており、各メーカーがそろえる車種の数も多かったからだ。大半のメーカーが軽自動車のような小さなクルマから、高級セダン、スポーツカー、さらに商用車まで用意した。クルマ造りが多岐にわたると、全車に共通する持ち味は表現しにくい。

そのためにフロントマスクの統一も行われなかった。クルマのコンセプトや運転感覚が統一されていないと、単純に顔立ちを共通化しても意味がないからだ。

この方針を変えて、各車種のコンセプトが違っても、メーカーの共通性を持たせようとするのが今のフロントマスクだ。安全装備などのメカニズムが共通化された事情もあるだろう。日産ではV字型のメッキグリルを幅広い車種に装着している。

ただし車種の数が多いと、極端なデザインは採用しにくい。トヨタではグリルが大きく口を開いたフロントマスクを採用するが、コンパクトなヴィッツパッソでは、フロントマスクだけが過剰に目立って視覚的にボディの前側が重く感じられる。アルファードヴェルファイアカムリなどのLサイズカーならバランスを取れるが、コンパクトな車種では難しい。

このあたりが統一されたデザインの課題だ。トヨタのようなデザインだと、車種によって無理が生じる。日産のV字型グリルのように、共通部分を抑えてアイコンのようにした方が無難だ。

ちなみに欧州メーカーは車種の数が少なく、メルセデス・ベンツも1980年代に190シリーズが登場する前は、今のEクラス(当時はこれがコンパクトメルセデスと呼ばれた)とSクラス、スポーツカーのSLシリーズが中心だった。車種が少ないから、統一された表現もしやすかった。

つまり今の日本車メーカーは、大量生産を誇りながら、デザインを統一させるチャレンジも行っている。そして統一させるなら、メーカーやブランドの存在感を際立たせる必要があるから、派手な顔が増えた。

日本車が日本国内を中心に販売されていた時は、ボディのどこかにメーカーを示すエンブレムが貼り付けてあれば十分だったが、今はそうもいかない。派手な顔が増えたのは、日本車メーカーがグローバル化して、世界を相手にするようになった証でもあるだろう。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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