マセラティ・ギブリ・ディーゼル

公開 : 2013.06.19 20:00  更新 : 2017.05.29 19:12

■どんなクルマ?

BMW 5シリーズのライバルとなるマセラティの魅惑的なモデルがギブリだ。このギブリというネーミングは、もちろんマセラティにとって初めてのものではない。1990年代前半には306bhpの2.0ℓツインターボ・エンジンを積んだビトルボ・ベースの2ドア・モデルがあったし、更にその前のモデルは、1960年代のV8エンジンをフロントに搭載したエキゾティック・スーパーカーだった。ただし、この3台のモデルは、贅沢なインテリアを持つことぐらいが共通することで、その血統は実に無計画といってよいだろう。

新しいギブリは、より大きなサイズのサルーンであるクアトロポルテと非常に近い関係にある。同じアーキテクチャー、ドライブライン、サスペンションを持ち、同じ生産ラインで造られる。

もちろん、ルックスは異なる。エクステリア・パネルは別物だし、ギブリはクアトロポルテよりほぼ1フィード短いボディを持つ。インテリアは、ドライバーを重視したダッシュボード・デザインが与えられている。

エンジン、トランスミッション、サスペンションをクアトロポルテと共有するのには、その開発コストをクアトロポルテと折半し、安くすませるためである。しかし、よりスポーティな味付けになるようにセッティングをされている。

エンジンは3種類、ドライブラインは2種類が用意される。まず、326bhpの3.0ℓツインターボ・ガソリン・エンジンがRWDとして設定される。同じ3.0ℓV6ツインターボ・エンジンでもチューニングの高い404bhpバージョンは、ギブリSに搭載され、RWDと4WDの両方が準備される。更に、マセラティがその年間台数を10,000台から50,000台にする計画のための切り札として用意したのが、271bhpの3.0ℓV6ターボ・ディーゼルだ。

すべてのモデルが、8速パドル・シフトZF製トランスミッション、ダブル・ウィッシュボーン・フロント・サスペンション、マルチリンク・リア・サスペンション、電子制御のスカイフック・ダンパー、リミテッド・スリップ・デフ、ブレンボ製ブレーキ、そして油圧アシストのパワー・ステアリングが与えられる。重量配分は前後50:50で、クアトロポルテよりも50kg軽いボディと、0.31というCd値を持つ。

■どんな感じ?

クルマの外ではギブリはアイドリング時に若干のサウンドを立てる。しかし、キャビンの中に座っていれば、沈黙の空間があるだけだ。もちろん、エンジンを回せばそのサウンドは大きくなるが、不快な侵入はない。確かにBMWほどの遮蔽性はないかもしれないが、その一方でスポーティなフィーリングを醸し出しているのかもしれない。ギアレバーの横にあるスポーツ・ボタンを押せば、1800rpmを越えたあたりから分厚いバック・ビードのサウンドを聞くことができるのだ。これには、雑音を消すアクティブ・サウンド・システムのもたらすメリットも大きい。

エンジンは、ノーマル・モードでは61.2kg-mのトルクを2000-2600rpmで発するにもかかわらず怠惰なフィーリングだ。しかし、モードをスポーツ・モードにすれば、325bhpのガソリン・エンジンよりも活発な感じに変わる。0-100km/hが6.3秒というタイムも信じられるものになる。

そして、この俊足ぶりはコーナリングでも発揮される。正確なコーナリングで、可変レシオのステアリングも良いセッティングがされている。EPSをオフにして、アルミニウム製のパドル・シフトを操作して低いギアを選択すれば、ギブリはコントロールしやすいテール・スライドを見せてくれる。

ステアリングのフィーリングも良い。クルージング・スピードでも適度な重さを持ち、ハードなコーナリングでも、フロントのラバーがきちんと仕事をしていることが解る。

ギブリのウィークポイントは、その乗り心地だろう。センター・コンソールにある可変ダンパー・ボタンのどのモードを選んでも、いまひとつなのだ。鋭利な峰や浅いくぼみでサスペンションがドタバタと音を立て、バタつく感じがする。鋭く波打つ路面状況では、ジャガーXFやBMW 5シリーズのようなボディ・コントロールは期待できない。

インテリアの魅力は抗しがたいものがある。綺麗にしつらえられた本革と、微妙なアクセントを見せるアルミニウムとウッドのアクセント。サポートが良く贅沢な造りのシートと、優れたエアコンは、ロング・ドライブを快適なものとしてくれる。また、エルゴノミクスも大した問題はなく、しかもリアには充分なスペースが用意されている。

■「買い」か?

まったく新しいエグゼクティブ・クラスへのエントリーは今では非常に稀なケースだ。その新しいエントリーであるギブリが、BMW 5シリーズやメルセデス・ベンツEクラス、そしてジャガーXFに戦いを挑むわけだ。

その筋骨逞しい魅惑的なスタイル、優雅な立ち居振る舞い、高級なキャビン、明快なパフォーマンスは、たしかに大きな魅力である。また、その少ないCO2排出量も魅力だ。ギブリにはほとんど決定的な欠陥はない。しかし、英国の条件の悪い道という条件下では、やはりその乗り心地についてマイナス点をつけなければならないのが残念だ。

とはいうものの、ギブリがここ数年でデビューしたモデルの中でも、望ましく、刺激的で、エグゼクティブなクルマであることは間違いない。

(リチャード・ブレムナー)

マセラティ・ギブリ・ディーゼル

価格 £48,830(730万円)
最高速度 250km/h
0-100km/h加速 6.3秒
燃費 17.0km/ℓ
CO2排出量 158g/km
乾燥重量 1935kg
エンジン V型6気筒2987ccターボ・ディーゼル
最高出力 271bhp/4000rpm
最大トルク 61.2kg-m/2000-2600rpm
ギアボックス 8速オートマティック

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