フェラーリ譲りのV8エンジンでお別れ マセラティ・ギブリ 334ウルティマへ試乗 限定103台

公開 : 2024.01.09 19:05

現行ギブリの最後を飾るフェラーリ譲りのV8ツインターボ 熱狂的トライデント信者へ向けた103台限定 音響的な魅力は近年の雄 英国編集部が評価

V8エンジンを搭載した最後のギブリ

2030年代の前半まで、内燃エンジンとの別れを記念する、特別仕様が数多く発表されるだろう。今回試乗した334ウルティマも、その1台。V8エンジンを搭載した、最後のギブリとなる。加えて現状では、ギブリというモデル自体にも一旦終止符が打たれる。

マセラティがメジャーブランドへ躍り出るべく、競争力の高い上級サルーンをリリースしてから、早いもので10年が経過した。戦略的な価格設定で、ディーゼルエンジンをラインナップしつつ、ライバルほどの成功は掴めてこなかったのだが。

マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)
マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)

それでも、マセラティの存在感を高めることには貢献した。不足ない数を販売し、トライデント・マークのSUVを、2種類も発売できる素地を作ったといえる。

2021年にはギブリ・トロフェオが追加され、クロスプレーン・クランクとウェットサンプ設計の3.8L V8ツインターボエンジンを獲得。基本的にフェラーリのF154型ユニットのショートストローク版といえ、モデル後期の注目度を高めるのに一役買った。

2023年に投入されたのが、この334ウルティマ。数字はもちろん馬力ではなく、最高速度だ。ベントレーフライングスパー・スピードより1km/h高く、世界最速の4ドアサルーンの1台にノミネートしている。従来のトロフェオより、8km/h向上している。

それを叶えたのは、高性能なタイヤと、カーボンファイバー製スポイラーによる空力の改善。21インチ・アルミホイールも軽量化され、合計で約20kgのダイエットも影響しているはず。

5000GTにちなんだ103台限定

334ウルティマの特徴となるのが、1959年のマセラティ5000GTの色合いへ近づけた、ロイヤル・ブルー塗装。インテリアは、テラコッタ・レザーで仕立てられる。

限定103台の1台であることを示す、記念プレートもあしらわれる。この103台というキリの悪い数字は、5000GTのコードネーム、ティーポ103にちなんでいる。

マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)
マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)

ただし、運転支援システムの一部は無効になった。電動だったグローブボックスは、手動になった。いずれも、許せる範囲ではないだろうか。

ドライバーの正面には、アナログのメーターが2枚。大きな金属製シフトパドルが、ドライバーの気持ちをくすぐる。インフォテインメント・システムのぎこちない動きや、ワンテンポおくシフトセレクターの反応などは、ドイツ勢に遅れをとる部分だろう。

さて、肝心の走りだが、残念なことに季節は冬。アルプス山脈へ向かったものの、試乗車にはピレリ・ソットゼロというスタッドレスタイヤが履かされていた。最高出力580psを誇る、後輪駆動のサルーンが叶える能力の一端は、確かめられたけれど。

筆者としては、トラディショナルなFRレイアウトを称賛したい。だが、BMW M5やメルセデスAMG Eクラスといったライバルが、四輪駆動へ切り替わった理由も理解している。新しいグラントゥーリズモも、四輪駆動へ生まれ変わった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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