フェラーリ・ルーチェはもっと美しくなるはずだった? 世界一のインテリアと、記者が見た「本来の姿」【UK編集部コラム】

公開 : 2026.06.01 12:05

フェラーリ初のEV『ルーチェ』のデザインが今、大きな話題を呼んでいます。記者は技術的な側面を高く評価しつつ、外観に関してはエンジニア側の意見が強すぎたのではないかと推測。発表会で見た「ある模型」に注目しました。

評価されない技術的革新性

ただ単に美しいだけではダメだったのだろうか? 先日の発表を受けて、フェラーリ・ルーチェはネット上でジャガーと似たような注目のされ方をしている。多くの人々が反応を示し、ルカ・ディ・モンテゼーモロ氏(フェラーリの元会長)も発言した。しかし、ソーシャルメディアのユーザーたちほど多くを語った人はいない。そして、そこでの反応は芳しくない。

筆者はルーチェの外観は好きではないが、その技術的革新のいくつかが評価されていないのは残念だと思う。50万ポンド(約1億円)もするフェラーリがコーナーを曲がる際の挙動は、それ単体では興味は限られる。しかし、もしルーチェの走りが魅力的であるなら、他のEVにどのような影響を与えるのか、もっと詳しく知りたいと思う。

フェラーリ・ルーチェと筆者
フェラーリ・ルーチェと筆者    AUTOCAR

車内で聞こえるサウンドは、どうやらフェイクではなく、実際に発生しているメカニカルな音をそのまま増幅して流しているようだ。これは良いものなのか、あるいは役に立つのかはわからない。だが、少なくとも本物であることは確かだ。

次に、パドルシフト。これはギアチェンジ用のパドルではない。減速と出力を調整するためのものであり、減速を強めると、出力が抑えられる。ドライバーならコーナー進入時には強力なエンジンブレーキをかけ、コーナー出口では出力を抑えたくなるだろうし、そもそも最高出力1000ps以上というのは過剰だ。このパドルは有用なのだろうか? 仮にそうだとして、ルーチェは1050psあるが、例えば200psのホットハッチでも有用なのだろうか? 興味を惹かれる。

LoveFromの発言力はいかほどに

次にインテリアだが、実際に見て、触れてみて、現時点で世界一だと確信した。手触りが素晴らしい。質感の高さが際立っている。そして、使い勝手も極めて優れているようだ。これ以上のものはないと思う。

しかし、こうした要素は見過ごされつつある。なぜなら、(こう言っても物議を醸すことはないと思うが)ルーチェは美しいクルマではないからだ。

フェラーリ・ルーチェ
フェラーリ・ルーチェ    フェラーリ

だが、もしかすると、ルーチェはもっと美しいクルマになるはずだったのかもしれない。ルーチェに触れた際、空力に関する記者説明会で、フェラーリのエンジニアの1人がルーチェの小さな模型を持っていた。その模型は、光沢のあるブラックのパッセンジャーセル(キャビン)と、それを囲むシルバーのボディで構成され、両者の境界線がとても鮮明に示されていた。これはデザイン会社LoveFromの共同創業者であるマーク・ニューソン氏が、取材で語っている点でもある。

その模型で強く印象に残ったのが、圧倒的なまでの美しさだった。流麗だ。フェラーリにカメラを禁止されていたため、写真を撮ることはできなかったが、量産車とはシルエットが異なっていたように思う。より低く、よりシャープで、そして、そう、より美しく見えたのだ。

ルーチェはもともと、あのような姿になる予定だったのだろうか? もちろん、デザイナーの初期のスケッチに、量産車よりもはるかに印象的なフォルムや、巨大なホイール、非現実的なほど低い車高が描かれていることは珍しくない。しかし、LoveFromはフェラーリに招かれた外部の会社だ。デザインの仕上がりについて、例えば取締役会で「このルーフラインやボディの造形は不可欠だ」と主張し、エンジニアたちに一切の変更を許さないような、社内デザイナー並みの強い決定権を持っていたのだろうか?

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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